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もともと、横一線からヨーイドンで6kも走るコース、いくら力のある選手でも、序盤から独走することはない。ある程度実力のある選手たちで第一集団を作ると、途中脱落者こそぽつぽつでることはあっても、大きな変動は暫くはおきない。

周りの様子をうかがうと、杏子以外はあまり見たことのない選手も多かった。インターハイ予選とは少し顔ぶれが違うのがわかる。

距離が長いため、より長距離が得意な選手が増えるのだろう。知らない選手だからといって油断はできない。

4kを過ぎた辺りになってくると、人数も10人を切って来た。ここまでのペースでいくと、だいたい6kをちょうど20分くらいだろうか。ほぼベストタイムである。

それでも、苦しさはそこまで感じていなかった。調子はいい、と感じていた。


ちょうど4.5キロくらいだっただろうか。

レースに動きがあった。

集団前方を走っていた長久手高校の選手がロングスパートにでたのだ。

華は不意を突かれて、反応に遅れた。ヤバイ、おいてかれる、そう思ったとき、左からすっとそれに突いていく影があった。

杏子だった。

杏子が対応したことで、その隙に他の選手も距離を詰める。華も、ペースを少しだけ上げ遅れを取り返した。

この動きに、最初に仕掛けた長久手の選手は、いったんペースを落ち着けた。

しかし、この揺さぶりによって、先頭は6人に絞られた。


ラスト一キロで勝負しようと思っていたが、早めの仕掛に対応することに体力を使ってしまった感があった。

そこで、華は冷静に勝負どころをずらすことにした。


そして、のこり500mに差し掛かろうとするとき、急に集団の空気が凪いだ。

来る。

歩道橋をくぐったタイミングで、誰からともなくスピードを上げる。

華はトラック一周程度のスパートには自信があった。四人をおいて先頭に立つ。が、すぐ後ろについてくる人影にも気がついていた。

おそらく杏子だ。

彼女は東海大会も、最後の最後に抜いていったのだった。

覚悟を決めて、襷をとる。

負けるもんか、と必死で地面を蹴る。

前へ前へ、それだけを考えて、最後の力を振り絞る。美姫が華を呼んでいる。

そして、誰にも抜かれることなく、その手に襷が渡ったのだった。

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