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その日の練習のはじめ、突然監督に設定タイムをいわれた。
「二宮、今日は集団抜けて6km20分で走れ」
つまり、1キロ3'20"ペース?いままで、3'40"で途中まで来て、ラストあげるくらいだったのに。。。
華が明らかに嫌そうにしてると、早田先輩が寄ってきた。
「チームのことは私に任せて。最近、後輩のフォローばっかりだったでしょう?」
「でもそれは私がやりたくてしてて」
「やってほしいの。チームのために。エースになってほしい。」
渋る華に、まっすぐそう言った。
「二宮、」
監督が呼ぶ。
「やれるな?」
「...はい」
こうして、華は再び数字との戦いに挑むことになった。
しかし、それは簡単ではなかった。
スピード自体は3000で走っていたより遅いが、なかなか最後までキープできない。
伸び悩むと、いろはに相談した。
それに対していろはは
県の駅伝の先輩に一緒に走ってもらったら?
とか、インターバルいれてみたら?とか、いろいろなアイデアをくれた。そして時には、今週末暇だから走りに来る?といって、実際二人で走ったりもした。
苦しむ華に先輩たちもたくさん応援してくれた。
燈真先輩は、練習中折れそうなとき入ってきて、
「後ろつけ!」
といって先を走ってくれた。
前を走る人がいると、風が避けられるだけでなく、ただついていくだけで前に進むから、無になって走れる。それが結構大きかったりする。
そして、それはおそらく早田先輩の差し金であることは間違いなかった。その早田先輩は、1、2年生がメニューを全員こなせるように、走りながらも常に目を配っていたし、本人も練習に一切妥協しなかった。
「華、今日はどうだった?」
もちろん、華のことも気に掛けていた。
「だめです、ラストのラップが」
「燈真いてもだめ?」
「5キロ越えた辺りで急にだめになります。でもいてくれた方が、走りやすいです。」
「まあ、もうちょい繰り返すしかないかな」
「...頑張ります。」
そして華のタイムに対しても、一切妥協しなかった。でもだからこそ、早田先輩の本気を感じていたし、それに答えようと頑張れたのだ。
そんなたくさんの人の協力のお陰である日、
「19分58!」
ついに設定タイムをクリアした。
予選まで
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