5
ジョグをおえたあと、いろはは菜月となにかしゃべって、部室に消えた。
華は帰りを待ち伏せしようかどうか迷っていた。そもそも裏門か正門かどっちからでてくるかもわかんないし、どう待ち伏せるのか検討がつかなかった。
ただ、なんとなく、ここであきらめて帰るのも癪なので、部室からいろはがでてくるのを待つことにした。どうするかはそれから決める。
すると、制服に着替えたいろはが、部室からひとりででてきた。正門側に来い!と心のなかで祈っていた。すると、あろうことか、いろははまっすぐこちらに向かったきた。そして、遠くからにこり、と綺麗な微笑みを向けてきた。
「二宮華ちゃんだよね?ずっといた?誰かになにか用でもあった?」
フェンス越しに、そう訪ねてきた。
「真木さん、、い、いろは先輩に、どうしても会いたくて。来てしまいました。」
突然、他県の一度しか話したことない子がきたって、迷惑だよな。
だが、いろはは少し驚いたように目を見開くと、言った。
「それは...そしたら、そこでまってて、今いく」
いろはは本当にすぐ、正門からぐるりとまわって、華のもとへやってきた。
「河川敷のほう、いかない?私の家の帰り道にあるの」
はい、といって、歩きだした。
本当に会えた。
それから、歩きながら、華はインターハイでいろはと走って感じたこと、そのあと不調に陥ったこと、不調から抜け出すにはいろはともう一度走る必要があると思って、はるばる東京まできてしまったことを話した。
「すっごいね。それで一人できたんだ。」
と、けらけらっと無邪気に笑う。
「でも、そうかなーって思った。わざわざ来て、一緒に走らないわけには行かないなーって。」
だからほら、ここなら走り放題!といって、いろはが足を止めると、川沿いに作られたパルプのランニングコースが広がっていた。
「でも、練習さっき終わったばっかなのに、大丈夫なんですか?」
華がそう聞くと、
「そんなこと言ったって、華ちゃん、走んなきゃ気が済まないでしょ?大丈夫、減るもんじゃないし」
そういって荷物を草むらに放り出した。
「さ、行こ?」
そして、二人は走り出した。
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