5
菜月についていくのは中盤までは速いペースではあったが苦のないことだった。集団は縦に長く延びていた。そして、ラスト二周に差し掛かったところで、誰かがロングスパートをかけた。しかし、それを先頭は押さえ、再び縦長の集団へと戻った。
この時点で華は菜月のすぐ後ろを、6、7番目くらいを走っていた。
勝負はラスト一周だと周りの空気からなんとなくわかった。
そして、いよいよ、鐘がなると、それを合図に誰からともなくスパートをかける。ここまでのペースに思いの外使ってしまって、思うようにペースが上がらない。けど、それは華だけではなかった。菜月のペースも警戒していたほど上がらない。ここが勝負!といっそうちからを込めて地面を蹴る。そして、なんとか菜月をかわし、前に出た。そしてそのままゴールに駆け込んだのだ。呼吸もままならず、そのままた折れ込む。
やった...5位...決勝だ...!
ふとスタンドを見ると、桜ヶ丘の部員が歓声をあげていた。優子も斎藤も、燈真先輩も監督までも叫んでいた。
華は召集で見れていないが、ひとつ前の組で真木いろはがものすごい走りをした。ラスト一周でスパートを掛けると後続を一気に突き放して、二位に五秒差をつけてゴールしたのだ。しかもその走りはまだまだ余裕があり、大きく、見るものを引き付ける力があった。
しかし、華のラストの前を抜き去るその気迫はもそれに負けないくらいだった。本人は気づいてないだろうが、鬼気迫るものがあった。監督などはそこから涙目なのであった。
スタンドを見上げた華は、監督の見たことのない表情に一瞬戸惑ったが、感謝もこめてそちらに向かって大きくガッツポーズをした。
一方、引き上げていく選手の波の中に、うつむきながら帰る選手がいた。新海学園2年折田菜月だ。そして、彼女の背にそっと手を掛ける人がいた。同じく3年の真木いろはである。
「頑張ったよ。ずっと細かい駆け引きとかも全部戦ったじゃん。」
「はい。。。でも、」
そのあとは言葉にならなかった。
「うん、あとは先輩にまかせときな」
仇はうつからと、決意の表情だった。
予選三組は留学生、橘女子付属3年のセバスチャン・サラが引っ張りハイペースなレース展開になった。そして、明日の決勝に行く18人が決まった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます