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翌朝は一瞬だった。
とにかく午前中から走んなきゃいけない華は早めに起きて、朝食を軽く済ませると、すぐにジョグに出掛けた。
戻ってくるとユニフォームをしたに来て、ジャージとTシャツを上からはいた格好でエントランスに向かった。もう暑くなり始めた中、競技場につくとすでにたくさんの選手や監督がいた。
ジョグをして来たばかりなので、あまりアップは急がず、スタンドの一角を場所取りして荷物は監督に預けた。そして、優子と二人アップにむかう。
想像以上の忙しさだった。
緊張する暇もない。
たんたんとアップメニューを消化し、そのまま召集場に向かった。
召集場の手前、優子とわかれるとき
「頑張って」
「頑張る」
短い言葉が、改めて、レースだと思い出させる。
こんなレースはじめてだ。正直、決勝進出の自信は結構あったのだが、ここに来て不安になってきた。弱気、だめだ。
召集場には先に予選一組の選手がすでに集まっていた。その中には、二連覇のかかった大本命、真木いろはもいた。
すごい。そもそも、3000の「予選」自体がはじめてで、こんなに人が多いのか、と少しのまれそうなのを必死で押さえ、点呼を待つ。すると、隣にいろはと同じユニフォームをきた子がいた。あれ?見たことある、だれだっけ??
そう思っていたら、点呼でわかった。
「新海学園2年折田菜月」
私の代の全中とった人だ。華は全中はそんなに芳しくない成績だったから、むこうは覚えてないだろうけど。
しかし、思い出したことで、逆に緊張してしまった。そういう人たちと走るんだ。
トラックへの入場になった。
めったにスタンドをながめたりしないのだが、たまたま、監督と先輩たちがいるのを見つけた。
「華、ファイトー!!!」
声を揃えて叫んでくれた。
インターハイ女子3000mにでるのは、桜ヶ丘は華ひとり。今日は誰にも気兼ねなくていい。みんな応援してくれてる。
少し落ち着きを取り戻した。スタートにつく。このレースは折田菜月についてみよう。
左胸に手を当てる。目をつむる。それから三秒、今日の空は入道雲が浮かんでいた。
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