⑤ 見守り隊の会話 ~もも叶の語り~
その日の昼休みは、夢は入ってみたい部活の見学とかで、教室にいなかった。
それをいいことに、せいらと中休みの続きを話し合う。
「夢のこと、やっぱ心配だね」
「そうね……」
向かい合わせた机。
その上のお弁当箱に手を付けずに、せいらも考え深げだ。
「ね、今日の二人のデート、こっそりかげから見守れないかなっ」
思い切って言ってみたけど、せいらは首を横にふった。
「今回はついてくのやめましょう。せっかく二人きりなんだもの。貴重な時間だと思うの」
うーん。
「そだね。過保護もよくないよね」
目線をあげて、せいらはこっちを見やる。
「それに、ここは星崎さんにお任せするのが、いちばんいいと思うわ。夢っちにとっては、いちばんわかりあえる相手なんだし」
うん。たしかに。
なっとくしかけたそのとき。
「いや、オレならついてくね」
ふいに、横から声がした。
「神谷先生!」
「なんでいるのよ!」
せいらの言葉に、神谷先生はおどけて手を挙げた。
「またひでーな。学校に先生がいちゃいけねーか」
カレはひょいと、せいらのお弁当をつまむ。
「あっ! あたしのサンドイッチ!」
返しなさいよとせいらが手をのばしーの、神谷先生がかわしーのしてるあいだに、あたしは言う。
「夢なら、だいじょうぶですよ。案外しっかりしてるし」
ぱくり。
サンドイッチを一口かじりながら、神谷先生は言った。
「夢未ちゃんじゃないんだな。心配なのは先輩のほうだよ」
サンドイッチを奪いかえして、せいらは言う。
「星崎さんだったら、いつもの王子様度全開で夢っちをうっとりさせると思うわ」
「だね。今回は久しぶりってだけあってパワーアップしてたりして。にひひ」
「それが心配だっていうんだよ」
神谷先生はまた奪ったサンドイッチをもぐもぐしながら、
「会えない時間をおいて、たまりにたまったものが爆発したらどうするんだ。夢未ちゃんなんかひとたまりもないだろうよ」
んなあほな。爆弾じゃあるまいし。
「一理あるわね」
せいらまで?!
「夢っちって見たとおり、ぽややんとしてるとこあるし、いろいろウブっていうか」
サンドイッチをもった手で、神谷先生がせいらを指さす。
「だろ?」
「まぁ、そしたらそしたで、星崎さんに壊されたらいいじゃないの。そっとしといてあげましょ」
再び奪い返したサンドイッチをこちらももぐもぐしながら、せいらが平然とまとめた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます