第208話 超大国の影響力がエグい
今のパワーバランスはOU一強状態で、近い将来と言わず、すでに世界はOUに支配されている、と熱弁する評論家もいる。
2040年現在の世界人口は90億人を超えている。
人口20億人のOUは、一国で世界人口の四分の一近くを占めていることになる。
人口。
国土。
経済規模。
軍事力。
いずれもOUは世界のトップだ。
多くの国が、自国の経済をOUとの貿易に頼っている。
そのせいで、世界中の国の命綱を握るOUの蛮行を誰も非難できず、世界中がOUに追従する形になっている。
それは陰謀論だとOUを擁護する評論家もいる。
けれど、国連の動きを見れば、事実だと認めざるを得ないだろう。
この危機的状況に、執務室には冷たい沈黙が流れた。
その静寂に耐えきれなくなった俺は、つい前のめりになってしまう。
「どうするんですか早百合大臣。せっかく経済再生したのに、もしも海水の利用を禁止されてしまったら元の木阿弥じゃないですか」
緊迫した口調の俺に、だけど早百合さんは不敵に笑った。
「問題ない。日本は条約に加盟しなければ良いのだ」
『え?』
と、その場にいたほぼ全員の声が重なった。
その中で、桐葉の可愛い忍び笑いが漏れた。
「あのねハニー。国連は別に世界政府じゃないから、各国に何かを強制する力はないんだよ」
亜麻色の髪をカーテンのように垂らしながら頭を倒して、桐葉は大胆に俺の顔を覗き込んできた。
いつもながら距離が近くて、ドキッとしてしまう。
「針霧桐葉の言う通りだ。日本国内であれば法律違反者を捕まえる警察がいる。だが国連の命令を無視した国に武力制裁をするための組織としての【国連軍】、などというものは存在しない。そもそも、各種条約に加盟するかは各国の意志に委ねられているしな」
「なぁんだ、そうですか」
と、俺は大きく胸をなでおろした。
みんなも息を吐きだして、執務室の空気が一気に緩んだ。
「驚かせて悪かったな。流石に、あの総理も自国が不利になることはすまい。それよりも、私は生徒会選挙に注目したい」
普段の戦乙女然とした凛々しさをやわらげて、早百合さんは優しいほほ笑んだ。
「貴君たち超能力者は、常人にはない苦労がある。どちらが生徒会長になっても、多くの生徒が青春を謳歌できるよう、素晴らしい学園にして欲しい。頼めるか?」
一国の大臣から託された期待に、美方と琴石は背筋を伸ばして大きく頷いた。
が。
「お任せ下さい! この世界最強の超能力者! 万物を灰にする灼熱紅蓮のマグマ使い! ボルケーノ貴美美方様が生徒会長の玉座に座り! そして凡民たちを導いてごらんにいれますわ! オーホッホッホッ!」
口に手を添え高飛車にのけぞり笑う美方に、誰もがげんなりと肩を落とした。
そのことに気づかず高笑い続ける美方に、弟さんの守片がすすっと近づいた。
バチバチッ!
「ウッ――」
スタンガンのようなスパーク音の共に、美方は喉を詰まらせた。
言葉と意識を途切れさせて倒れる美方を抱きとめると、守方は廃材を運ぶぐらいの気安さで美方を引きずり退室した。
「じゃ、僕らはこれで」
執務室のドアが閉まると、俺は桐葉に視線を投げた。
「なぁ、あれってどっちが悪いんだ?」
「4:6で美方じゃない?」
言いながら、桐葉はニヤリと笑いながら指先に毒針を作った。
無言の訴えに、俺は将来の結婚生活に一抹の不安を覚えた。
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4月10日にギフトを頂きました。3月9日にくれた方と同じ人です。
本当にありがとうございます。
作家という職業は読者の皆様に支えられていると物理的に実感します。
(それが作家職の良い所)
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本作、【スクール下克上 ボッチが政府に呼び出されたらリア充になりました】を読んでくれてありがとうございます。
みなさんのおかげで
フォロワー17391人 596万6595PV ♥90901 ★7247
達成です。重ねてありがとうございます。
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