第237話 美稲を救うフローチャート

 俺らの行動は早かった。


 まず、いつもはネット上に念写する真理愛の念写画像や動画を保存した記録メディアを、東南アジア各国の共同体である、パシフィック・アジア・ユニオン、通称PAU内のマスコミへと、テレポートで送りつける。


 俺のテレポート飛距離は現在1万キロ弱。

 地球の円周の四分の一に達する。

 東南アジアは、全て射程圏内だ。

 マスコミなら、情報の出どころは隠すだろう。



・ステップ1


 OU国内の人権問題のスキャンダル証拠を、山ほどを送り付けてやった。


 複数のアジア諸国がひとつになったOUだが、実際は元リーダー国民を優遇した疑似階級社会のようになっている。


 しかも、それを国家主導で行っている。


 OU政府の圧力による不当な逮捕、裁判、公務員の人事、大学入学試験や選挙の不正。元諸外国文化の弾圧。


 数え上げればキリがない。


 そもそも、元リーダー国が諸外国を併合し、オリエンタル・ユニオン、通称OUとなる際にも、数々の非人道的な裏工作の限りを尽くしていた。


 俺の送り付けた情報は世界中の人権団体を刺激した。


 翌朝の10月31日、テレビニュースは、OUの話題で持ちきりだった。


 俺らの思惑通り、OUは一日でバッシングの嵐を受けているようだ。


 さらに、美稲自身がOU行きを不安視しているという動画を撮影してネットに投稿。再生回数は1億回を突破した。


 これで、世界中に、OUは人権問題を抱えた差別国家、という印象を与える。


 結果、美稲を引き渡して大丈夫なのか? という風潮を日本国内に作ることに成功した。


 

・ステップ2


 11月1日。


 今度は、OU政府の各要人たち、大臣や政治家、高級官僚たちのパワハラ、セクハラの証拠動画をバラまいた。


 これで、人権問題に興味のない人たちも巻き込む。


 特に、OU国民は政府への不満を募らせた。


 国民の大多数を占める庶民は、生活に不満を持つものだ。そうした人は得てして、成功者のスキャンダルが好物である。


 要人たちのスキャンダル記事を目にしたOU国民は、水を得た魚のように活気づいて、ここぞとばかりに政府を批判し始めた。


 結果。OU国大統領は巨悪の根源として扱われ、退陣運動が高まった。


 これに対して、OU政府は必死に火消しに回り、マスコミの情報は全てフェイクニュースだと声高に叫び、デモ隊に催涙弾を打ち込み逮捕した。


 さらに、一連の騒動を外国による情報テロであると発表し、OU国はテロには屈しないと強気の被害者姿勢を貫いた。



・ステップ3


 11月2日。


 美稲の引き渡し前日。


 トドメとばかりに、OUの要人たちの汚職、賄賂や傷害、強姦、窃盗、麻薬の密売やマフィアとの繋がりなど、犯罪の証拠をこれでもかとバラまいた。


 パワハラやセクハラは、そもそもハラスメントかどうかという解釈が人によって異なる。


 だが、これらの犯罪行為を擁護できる者はない。


 しかも、俺らは一日中OU政府の動向を監視して、わざわざOU政府の政治家たちの言い訳を潰すような、反対のスキャンダルを絶妙なタイミングで流した。


 PAU加盟国の中には、OUとの関係を考えて記事にしない国もあるだろうし、OUが圧力を加えて、記事にするのを差し止めもするだろう。


 けれど、PAU加盟国全てがそうではないし、全てのメディアに圧力を加えることも不可能だ。


 どこか一国、どこか一社でも記事にすれば、情報はネットを通じて全世界に広がる。この流れは誰にも止められない。


 しかも、先日行われた、デモ隊への催涙弾を使った逮捕劇の動画も流した。


 警官たちが一般市民に催涙弾を打ち込み殴り倒し、引きずり、トラックに詰め込むシーンはインパクト絶大で、世界中の人権団体がさらに勢いづいた。


 OU国民なら、なおさらだ。


 結果、OU国内の至る場所でデモ活動が行われ、警察署や役所、OU政府政党ビルなどに民衆が詰めかけた。


 人口20億人というOU国最大の強みが、自身に牙を剥いたのだ。



・ステップ4


 同日、11月2日の夜。


 超能力者管理委員会そのものが、美稲を手に入れるためにOUが国連に働きかけて作ったものであるという証拠動画をバラまいた。


 さらに、美稲の美貌に鼻の下を伸ばす政治家たちの猥談動画も添付する。


 事前にセクハラの証拠動画を流しまくり、OU国上層部はセクハラオヤジたちの巣窟、というイメージ戦略を行っていたため、これは効いた。


 翌、11月3日土曜日。


 美稲の引き渡し日の朝。


 世界中の知識人はOU国上層部を国益のために国連を私物化する悪党だと糾弾し、一般大衆はOU国上層部を女子高生趣味の性犯罪者集団であると糾弾していた。


 ネット上では、女子高生にわいせつなことをするために国連に超能力者管理委員会を組織したOU国上層部がYABEEEとお祭り状態だ。


 当然、日本国内でも美稲を渡してはいけないと、国民が国会議事堂と首相官邸の前で抗議活動を始めた。


 

 そうして、引き渡し予定時刻二時間前の午後一時。


 俺ら11人は、家のリビングでMR画面で緊急会見動画を視聴していた。


 大勢の記者の前に姿を現した総理は、苦虫を何十匹もかみつぶしたように表情を苦々しく歪めていた。


 一方で、その隣に座る早百合さんの表情は、充実しきっている。


 それから日本政府は、美稲のOU引き渡しの無期限延期を、公式発表した。


 俺らは全員、ガッツポーズで声を上げて喜んだ。


「いよしっ!」

「やったねハニー!」

「これで美稲ちゃんは救われたっす!」

「やっぱ真理愛は流石ね!」

「いえ、アイディアを出したのはハニーさんです」

「ハニーはえらいのです。いいこいいこしてあげるのです」

「ふゃっ! ハニー君、わざわざしゃがまなくていいんだよ。でもせっかくだからわたしもなでさせてもらおこうかな」

「まぁ、淫獣、いえ、凡民にしては頑張ったのではなくて?」

「姉さんがデレた?」

「デレてませんわよ!」

「みんなほんま凄いわ、ウチめっちゃ感動してんで!」

「ちょっ、抱き着くんじゃありませんわ淫乱グモ!」


 三者三葉どころか、十者十様の反応で歓喜してから、美稲が声を張り上げた。


「みんな!」

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 次回以降は

第238話 覇王早百合にサイコメトリーが通じない!

第239話 拉致された●●と美稲の親

第240話 もうダメだこの親早くなんとかしないと!

第241話 行け!僕らみんなの最強主人公!

第242話 拉致犯人は当然アイツら!

第243話 美方と琴石も参戦

第244話 救出作戦開始!

第245話 異能者VS異能者

第246話 ボルケーノ貴美美方様

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 次回更新予定は8月1日月曜日です。

 お待ちの間、ヒマがあれば同じくカクヨムに投稿した超邪気眼中二病作品

【勇者派遣会社セイバーグループ】全45話

 を読んでいただければ幸いです。

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 本作、【スクール下克上 ボッチが政府に呼び出されたらリア充になりました】を読んでくれてありがとうございます。

 みなさんのおかげで

 フォロワー19498人 749万7429PV ♥115473 ★7977

 達成です。重ねてありがとうございます。

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