第238話 覇王早百合にはサイコメトリーが通じない!

 三者三葉どころか、十者十葉の反応で歓喜してから、美稲が声を張り上げた。


「みんな!」


 俺らの視線が集まると、美稲はスカートの端を握り、佇んでいた。

どこまでも深く、感極まったように震え目に涙を浮かべた彼女は目の下を桜色に染めて、頬を涙で濡らして言った。



「ありがとう。大好きだよ」



 美稲の言葉にリビングは静まり、俺らが流れる涙を見届ける中、彼女は呟いた。


「もう知っている人もいると思うけど、私、父さんと母さんの本当の子じゃないんだ。私はそんなこと気にしなかったけど、妹が生まれたら家に居場所がなくなって、だから学校に居場所を作ろうと八方美人に生きてきたけど、本物は手に入らなかった」


 涙の粒が徐々に大きくなりながら、美稲は問わず語りに自分の弱さを吐き出した。


「だけどね、プロジェクトに参加して、みんなに会って、みんなと同じ学校に通えて……私、よかった!」


 悲しく濡れた声は、だけど徐々にぬくもりを得て、最後は笑顔で、溢れた涙をはじき飛ばした。


 その言葉で、自然とみんなの間に笑顔の花が咲き、俺も、かつてない達成感に誇らしくなった。


 俺は家族を守れた。


 俺らは仲間を守れた。


 そのことが、際限なく嬉しかった。



「その言葉を聞けだけで、私こそ救われる」


 廊下から笑顔を出したのは、ついさっき会見を済ませた早百合さんだった。


「早百合さん!? どうして!?」

「俺がアポートしたんだよ」


 ニヤリと俺が笑うと、続けて早百合さんは颯爽と美稲の前に歩みよった。


「内峰美稲。此度、貴君には本当に苦労をかけた。貴君と、そして諸君みんなに誓おう。私は、日本再生プロジェクトに参加したことを、決して後悔させない!」


 その自信と覇気みなぎる存在感に、俺は心を打たれた。


 みんなも、早百合さんに憧憬の眼差しを送っている。


 ずっと、この人の下に就いていたい。


 ――異能学園を卒業後は、異能省に正式入省だな。


 俺は密かに、進路を決めた。


「むっ、総理から電話か……はい、こちら龍崎。どうされましたかな、総理殿?」


 敵をきりきり舞いさせることに成功した軍師のように不敵な笑みを浮かべながら、早百合さんは通信先の総理の話を浴びている。


 デバイスが電気信号を直接脳の聴覚野に送り込むデバイス通信なので、総理の言葉はまったく漏れてこない。


 それでも、何を言っているかは想像に難くない。

 早百合さんは余裕の表情だ。


「今回の騒動と真理愛は関係ありません。PAUとOUは隣国同士ですし、スパイを送っていてもおかしくはないでしょう? では私は忙しいので」


 早百合さんが虚空をタップすると、今まで以上に無敵の笑顔を浮かべた。


「ふっ、これで当分の間、超能力者管理委員会は機能しないだろう」


 そこで、舞恋がはっとした。


「あ、でもOU国内のデモが収束したら……」

「いや、うまくすれば超能力者管理員会を組織解体に持ち込める。そうなれば、内峰美稲を引き渡す先がなくなる」

「超能力者管理委員会の場所がOUっていうだけで、OU政府に引き渡すって契約じゃないからな」


 俺が補足すると、舞恋は一瞬納得するも、ちょっと顔を青ざめさせた。


「で、でもOUのデモって、わたしたちが扇動したようなものですよね? 早百合さんがわたし以外の人にサイコメトリーされたら……」

「う~ん、どうだろうな。俺らはOUが隠ぺいしてきた犯罪行為を暴露しただけで、別にOUを潰すよう直接的に扇動したわけじゃないしな」

「それなら心配せずとも良い。私にサイコメトリーは効かないからな」

『え?』


 俺ら11人全員の視線が、訝し気に早百合さんを見つめた。

 いくらなんでも、それはあり得ないだろう。

 そんな俺らの疑念を感じ取ったのか、早百合さんは長い黒髪をかきあげ背筋を伸ばして、スイカ大の爆乳を張った。


「恋舞舞恋。私のバストサイズをサイコメトリーするのだ!」

「ふやっ!?」


 赤面しながら、舞恋は突き出された手を握り、握手をした。

 すると、舞恋は目が真円になるくらいまぶたをあげて驚愕した。


「すぅ、すごい……アンダー69センチ、トップ102センチのJカップ……」


 何人かの女子が溜息を洩らし、赤面し、詩冴は地面で鼻血を流しながらトロけていた。


「ふっ、これが私の実力だ」


 ボディビルダーのようなポージングをキメ、早百合さんは勝者の表情だった。


「では続いて、今、私が考えていることを読んでくれ」

「あ、はい……え? えぇええええ!?」


 悲鳴に近い声をあげて、舞恋は早百合さんから手を離して跳び下がった。


「どうした舞恋!?」

「え? ふゃぁっ!?」


 転びそうな舞恋の背中を抱きとめると、彼女は顔を顔を耳まで真っ赤にした。

 でもすぐに、もじもじしながら教えてくれた。


「えっとね、早百合さんの中身の情報を探ろうとしたら、衝撃が……」

「何人ものサイコメトラーで試したのだがな、どうやら私の自我が強すぎて許容量を超えてしまうらしい」

「確かに、私の念写でも文字化けしてしまいます。ちなみに心象風景がこちらです」


 真理愛が表示したMR画面には、砂嵐混じりの乱れた画像で、紅蓮に燃え盛る早百合さんが映っていた。

 俺らみんなの視線が、ぎょっと早百合さんに集まった。


「早百合さんて何者ですか?」


 俺が尋ねると、早百合さんは百戦錬磨の笑顔を見せてくれた。


「我が名は龍崎早百合! 日本初の女性総理になる女だ!」


 その瞬間。俺の目には、国会議事堂に立つ未来の早百合さんが、確かに見えていた。


「あと舞恋。そろそろ自分の脚で立ってくれないか?」

「ふゃっ!? ご、ごめんね」


 とは言いつつ、舞恋はたっぷり三秒、俺に体重を預けてから立ち上がった。

―—―—―—―—―—―—―—―—―—―—―—―—―—―—―—―—―—―—―

―—―—―—―—―—―—―—―—―—―—―—―—―—―—―—―—―—―—―

 次回以降は

第239話 拉致された●●と美稲の親

第240話 もうダメだこの親早くなんとかしないと!

第241話 行け!僕らみんなの最強主人公!

第242話 拉致犯人は当然アイツら!

第243話 美方と琴石も参戦

第244話 救出作戦開始!

第245話 異能者VS異能者

第246話 ボルケーノ貴美美方様

―—―—―—―—―—―—―—―—―—―—―—―—―—―—―—―—―—―—―

―—―—―—―—―—―—―—―—―—―—―—―—―—―—―—―—―—―—―

 余談ですが

 人気作品のスクールデイズのヒロインの桂言葉がバスト102センチのKカップらしくて爆乳ヒロインのバストってどれぐらいまで許されるんだろうって価値観が揺れます……。



 次回更新予定は8月8日月曜日です。

 お待ちの間、ヒマがあれば同じくカクヨムに投稿した超邪気眼中二病作品

【美少女英雄ガールズ・神話英雄女体化】全43話

 を読んでいただければ幸いです。

―—―—―—―—―—―—―—―—―—―—―—―—―—―—―—―—―—―—―

―—―—―—―—―—―—―—―—―—―—―—―—―—―—―—―—―—―—―

 本作、【スクール下克上 ボッチが政府に呼び出されたらリア充になりました】を読んでくれてありがとうございます。

 みなさんのおかげで

 フォロワー19589人 757万6779PV ♥116654 ★8015

 達成です。重ねてありがとうございます。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る