第224話 お待たせハニー♪ ナイトウェア選びにてまどっちゃった♪
その日の夜。
俺は自室で寝る準備をしながら、ひとり思索に耽っていた。
――どうして、人は人を苦しめるんだろう。
【地球中心天動説】ならぬ、【自分中心他動説】というのは、俺が悪党を指して言う言葉だ。
人は、他人に迷惑をかけなければ思想と言動の自由がある。
けれど、桐葉はハチの能力を持っているというだけでいじめられた。
サイコメトラーの舞恋や念写使いの真理愛も、いわれのない差別を受けてきた。
養子の美稲は、本当の子供が生まれた途端、お払い箱とばかりに両親から冷遇された。
美稲の言う、人は他人の手柄にケチをつけたり横取りしようとしたり自身との共同にしようとする、という話にも共感できる。
坂東が、いい例だ。
前の高校で同じクラスだった坂東は、俺と美稲の出世に嫉妬して、美稲を襲った。
俺と美稲は坂東を害していない。
だけど坂東は俺らの出世を妬んで、なのに自分で努力はせず、暴力に訴えてきた。
自己顕示欲は強いのに努力はしたくなくて、他人の手柄に乗っかったり奪ったり妬んで当たり散らす。
俺には理解できないし、理解したくない言動だ。
「……」
考えるだけで沈鬱な気分で頭にのしかかり、体全体が重くなる。
ベッドの上で仰向けに倒れ込んで、白い天井を見上げた。
通電発光塗料で天井そのものが光る天井に電灯はなく、見事なまでにスッキリとした平面だった。
――人の心もこれぐらい平坦ならよかったのに……。
前に桐葉と早百合さんが言っていた言葉を思い出す。
「無駄だよ舞恋。連中はね、尊敬されたいけど努力はしたくないんだ」
生物には少ない労力で最大利益を得ようとする【省エネ思考】と、より高い地位へ登りたいという【向上心】がある。
このふたつが合わさると【楽をして尊敬されたい】という最悪の思想に行きつく。
結果、坂東や伊集院、異能者廃絶主義者やOUのような連中が出来上がる。
自身が努力するよりも、他人の足を引っ張り落として相対的に自分の地位を高めたほうが楽だから、他人を貶める。
共感はできなくても、理屈は分かる。
でも、それが人の本性だとしても、俺は仕方ないなんて思わない。
むしろ、だからこそ、人は善くあるべきだと思う。
省エネ思考も向上心も、本能的衝動だ。
それに逆らってこその【理性】であり【文明人】だ。
楽をしたいなら多くを望まない。
尊敬されたいなら努力をする。
――そうだ。それで俺は、尊敬はされなくてもいいけど多くを望みたい。
思索の果てに、俺は自分の欲望に気づいた。
――俺は、桐葉が好きだ。真理愛も、茉美も、詩冴も、それに麻弥も、みんな好きだ。みんなが俺を愛してくれるなら、みんなが許してくれるなら、俺もみんなを愛したい。五人の女の子全員が幸せになれるよう、どんな努力だって支払うつもりだ。
だからこそ、俺はOU対策をして、日本を守らなくてはいけない。
だって、明るい家庭を守るには、明るい国が必要なのだから。
そう思うと、心の中の暗雲が晴れ渡り、全身に力がみなぎってくる気がした。
OUのことで気分が落ち込み、坂東のことを想いだして、思考を整理したおかげで、俺は自分が進むべき道、人生の指針が見えた気がする。
一種の、悟りの境地と言ってもいい発見だった。
その証拠か、今は坂東に感謝してもいい気分だった。
口元に笑みを浮かべながら、俺は晴れやかな気持ちで呟いた。
「うん、決めたぞ。俺は理性的な文明人として、桐葉たちのために頑張るんだ。そのためにも高校を卒業するまでは清いお付き合いをしてたくさん思い出を作るんだ」
桐葉たち一人一人と、二人きりの思い出を作る明るい未来を想像して意気込み、俺は上半身を起こした。
直後、部屋のドアが勢いよく開いて明るい声が飛び込んできた。
「お待たせハニー♪ ナイトウェア選びにてまどっちゃった♪」
「ぎゃああああああああああああ!?」
裸ワイシャツ姿の桐葉に、俺は悲鳴をあげた。
――思い出した。そういえば今日から桐葉と一緒に眠るんだっけ?
「ハニーってばひどいなぁ、人をお化けみたいに。えへへ、いいでしょ、これ?」
ぺろりと舌を出す桐葉が着ているのは、男物のワイシャツだ。
サイズは明らかに大きくて、手の甲が袖で隠れている。
裾はスカートのように桐葉の下半身を隠すも、芸術品のような脚線美はきわどい部分まで丸出しで、若干、白いショーツが覗いている。
乳袋のように大きく膨らんだ胸元はボタンが三つも開き、ナマの谷間を見るに、ブラはつけていないらしい。
「男の人って、こういうの好きなんでしょ? ハニーも好きそうだよね」
楽しげに笑いながら、左腕で胸を持ち上げて谷間を強調して、右手で裾をつまみ上げて、ふとももを見せつけてくる。
俺の視線は谷間とふとももの間を高速で行き来しながら、本能的衝動が滾り吼えた。
「や、やめろぉ! 理性が、文明人たろうとする決意が揺らいじゃうじゃないか!」
「知っているよ。ハニーは、結婚する前の、恋人時代の思い出を充実させるために、えっちなことを我慢してくれているんだよね?」
まるで照れ隠しのように亜麻色の髪をつかみ、口元でいじりながら、桐葉は乙女の表情で頬を染めた。
一方で、俺はベッドの上で体育座りになりながら、声を絞り出した。
「そ、そうだ。だから不用意に俺の暗黒龍を刺激しないでくれ。ぐっ」
「うん、でもね、ボクは信じているよ。ハニーなら、ボクのためにガマンしてくれるって。だって、ハニーの愛は世界一だもん」
瞳をキュンキュンさせながら、普段よりも一オクターブ高い声で甘えてくる桐葉。
その全幅の信頼があまりにも辛くて、俺の暗黒龍がさらに騒ぎ出した。
俺が膝を抱える腕に力を込めて耐えていると、桐葉は小悪魔のような笑みを浮かべて、幸せをかみしめるように身震いした。
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マグマは色々金属含んでいるからマグマをアポートすれば資源取り放題。
というコメントがありました。
私もそう思っていますし、その証拠に電撃文庫から発売中の【僕らは英雄になれるのだろうか】の主人公はマグマ魔術を利用して金属のマチェットソードを生成したりします。
でもネットで調べてもマグマを資源として扱う話がないんですよね。
噴火の危険は伴うでしょうが、マグマを地下資源として扱う研究とかないんでしょうかね。
もったいない。
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本作、【スクール下克上 ボッチが政府に呼び出されたらリア充になりました】を読んでくれてありがとうございます。
みなさんのおかげで
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達成です。重ねてありがとうございます。
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