第164話 みんな大好き糸恋ちゃん!

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「ありがとう。助かったぞ桐葉!」

「うん。さぁ、ここからはボクとハニーで空中戦だよ!」


 桐葉が闘志を込めた声で気合いを入れると、琴石が獰猛に笑った。


「逃がすかいな!」


 琴石の両手から幾重もの糸が放たれ、俺に絡みついた。

 そのまま、重機を思わせるほどに強く、抗えない力に引き寄せられた。


「しまった! うあっ!?」

「ハニィイイイイイイイ!」

「ふふふ、これでハニーが地面に落ちればウチの勝利……え?」


 確認だが、俺は琴石の手から伸びる糸に絡めとられ、琴石に引っ張られている。

 当然、俺は琴石に向かって飛んでいくわけで、俺の視界は、桐葉に勝るとも劣らない豊乳が埋め尽くした。


 ――のぎゃあああああああああああああああああ!


 俺は結構な高さから落ちた。


 なのに、琴石のはちきれんばかりにみっちりと詰まったおっぱいは抜群の張りと弾力で俺の顔面ダイブを受け止め切ってくれた。痛みはゼロだった。


「はぁっぁあああああああああああん!」


 俺の顔面は琴石の谷間に、両手は胸をわしづかんでいた。頭上からは、琴石の甘い矯正が響いてきた。


『わああああああ! カメラさん、CMに入ってください!』


 ――体育祭実行委員グッジョブだ!


「いやっ、あんっ、あ、あかん! そんなところ触らんといてぇ!」

「もが、もご、お前の糸でくっついて離れないんだよ! つっか変な声出すな!」

「せ、せやかて、ウチ乳が大きいから、感じる面積と体積が多い分、年々感じやすく、ぅぁん!」


 ――な、なに!?


 貧乳のほうが感度がいいとか、巨乳は鈍感という俗説があるけど、どうやら嘘らしい。

 言われてみれば、桐葉たちはみんな巨乳なのに感じやすい。


「ハニー! 琴石の鉢巻を取ればボクらの勝ちだよ!」


 頭上から、その桐葉の声が降り注いでくる。

 そうだ。これは騎馬戦。琴石の鉢巻さえ取ればこっちのものだ。

 琴石の催淫毒のせいもあり、俺は顔と両手に広がる感触にくびったけだった。

 だけど、愛する恋人の、未来の嫁である桐葉の声が俺に力をくれた。


 ――琴石、確かにお前のおっぱいは大きさも、張りも、弾力も、やわらかさも、桐葉に劣らない。だけどな、大きさも感触も関係ないんだ。


 滾る闘志を胸に抱き、俺は心を奮い立たせ欲望を振り払った。


 ――結局男は、好きな女の子のおっぱいが一番なんだ!


 愛欲が獣欲を凌駕して、俺は琴石の胸から手を離し、頭上に伸ばした。


「アカァアアアアアアアアアアアアン! 見えてる! 見えてるぅ! ウチのブラが、後生やから堪忍してぇなぁあああああああ!」

「あ……」


 俺の手と琴石のシャツは、クモ糸でくっついている。


 当然、俺が手を挙げれば、彼女のシャツも大きくめくれ上がってしまう。


 俺の目の前からシャツのカーテンが消えて、黒いハーフカップブラとその上に堂々とそびえ鎮座する白いHカップの谷間がさらけ出された。


「う、うぉおおおおおおおおおおおおおお!?」


 大迫力の絶景に俺が絶叫すると、周囲からも絶叫の声が上がった。

 2組は男女問わず、目をつぶりながら下を向いていた。


 ――お前ってやつらは……。


 一方で、背後の1組男子たちは全力でヤジを飛ばしてきた。


「邪魔だ奥井ぃいいいい! どけろぉおおおおお!」

「お前の後頭部しか見えないじゃないかぁあああああ!」

「ぬぉおおおお! 横に回り込めぇえええええええええええ!」


 ――お前ってやつらは……。


 2組がいい奴ら過ぎて生きているのが恥ずかしい。


 ――やっぱり、俺には1組がお似合いなのか。


「ハニーちゃんそこどくっすぅううううううう! イトコちゃんのバインバインをこの目にぃいいいいいいいい!」


 ――やっぱり、俺には1組がお似合いなのか……。


「あぁん! このままやとウチ、お嫁に行かれんくなってまう! 殿方に貰われるまでは、清いカラダでないといけんのに! 視線に汚されてまう!」


 ――2040年のこの時代になんておくゆかしくて大和ナデシコな考えの持ち主だ! やめろ、それ以上可愛くなるな! 好きになったらどうする!?


「そうだ、琴石、お前の糸でサラシ作れ!」

「せやった!」


 琴石は両手から大量の糸を作り出し、胸に巻いていく。

 それから、俺の手とくっついたシャツを脱ぐと、やっと俺から離れられた。


「うん、これでいいわぁ」


 まだ頬に赤みは残るものの、やっと琴石は落ち着きを取り戻した。

 俺も一安心、と言いたいけれど、琴石は上半身裸にチューブトップビキニを身に着けたような姿なので、十分にセクシーだった。

 しかも。


「ん? なんや? 乳を隠したのに周りの目が……」


 見れば、3組や4組、二年生や三年生の生徒と詩冴が男女問わず、らんらんと眼を輝かせていた。

 怯える琴石に、俺は一言。


「さっきお前がまいた催淫毒のせいじゃないか?」


 きっと、風に乗って周囲に散布されたのだろう。


「んな殺生なことありますぅ!?」


 などと涙目になる間にも、他の生徒たちは騎馬を崩し、詩冴を先頭にして琴石に殺到した。


 琴石は悲鳴を上げて騎馬から飛び降り、競技場の外へと逃げて行った。

 それを追いかける生徒たちの勢いは猛牛のソレで、催淫毒の効果がうかがえる。詩冴は素である。


「ていうかあんたはいつまで乗っているのよ?」

「ん? ああ」


 琴石が乗り捨てた滑川たちの馬に乗る自分に気づいた俺は、桐葉が回収してくれた。

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 本作、【スクール下克上 ボッチが政府に呼び出されたらリア充になりました】を読んでくれてありがとうございます。

 みなさんのおかげで

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 達成です。重ねてありがとうございます。

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