第140話 外患誘致罪ってなんですか?

●専門用語解説 OU

 オリエンタル・ユニオンの略。

 複数のアジア国家が併合されて生まれた連合国家。人口20億人でGDPは世界一位という超大国。平和の為、アジアの完全統一を標榜しているが、実際にはリーダー国による独裁体制がしかれている。ハニー君や美稲の身柄か命を狙っている。

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『いやぁ、やっぱり現金が一番ですなぁ。電子マネーならすぐに足がつきますから』

『では異能局への妨害工作はお願いしますよ』

『任せて下さい。バカなネット民や国民なんてね、私の口八丁ってコロってなもんですよ。それよりも日本がOUに併合されたあと、私のポストは?』

『心配しなくても君たち日本人工作員にはOU議会の上級党員の地位を約束しよう。君は日本併合の英雄になるのです』

『くぅ~、たまりませんなぁ』



「ななな、なんだこの映像は!? これはディープフェイクだ! 捏造だ! クッソあの有馬とかいう念写女の陰謀かぁああああああ!」


 顔をかきむしりながら絶叫すると、地糸は血眼になって真理愛の姿を探した。


 一方、判日と折柄はすっかり青ざめている。


 地糸の映像がある、ということは当然、二人の分もある。


 続けてメインモニターには、判日と折柄がOUの党員から賄賂を貰い、日本併合後のポストを条件に異能局の妨害工作を行い、日本経済を再び破綻させ、OUへと併合する手助けをする密約を交わす映像が流れた。


「皆さん、こんなフェイク映像に騙されてはいけません! これはCGです!」

「これこそが異能局の本性なのです! 邪魔な人間はディープフェイクで社会的に抹殺するんです。とある機関の調べでは念写能力者は映像を編集して念写することができるそうです! これは有馬の作った捏造です!」

「あの有馬とかいうクソガキはどこだぁあああ!」

「私ならここです」


 突然、真理愛がカメラの前に姿を現した。

 同時に、地糸が真理愛に殴り掛かった。

 俺は椅子から転がり落ちるように飛び出して駆けた。

 けれど、俺の三倍も機敏に、電光石火の早業で真理愛の前に体を滑り込ませた人物がいた。


 素手でパワードスーツに勝つ一騎当千の女傑、つまりは早百合次官だ。


 早百合次官はフランス軍を率いてイギリス軍へ立ち向かうジャンヌダルクのように勇猛な表情を崩すことなく、男の拳を額で受け止めた。


 赤いしずくが、一滴、二滴とスタジオの床を濡らした。


 硬いものが折れる音と水音が入り混じったのちに、地糸は悲鳴を上げた。


「ぎぃいいいいいいああああああああああああああ、手がぁああああ、私の手がぁあああああああ砕けたぁああああああああああ!」


 本人曰く、あの天然トゲ鉄球フルーツ、ドリアンをも砕くという早百合次官の額を殴った地糸は、右手を抑えてスタジオの床を転げ回った。


 いつの間にかメインモニターの映像は消え、地糸の暴行シーンの一部始終が映っていた。


「くっ、殴られてしまった。これは傷害事件だ。警察と弁護士に連絡をしなくては」


 わざとらしく喋りながら、早百合次官は110番、話を付けてから俺のほうを向いた。


「奥井ハニー育雄。すぐに彼らをここにアポートしてくれ」


 テレビ電話モードのMR画面には、交番前に集まっている警官隊が映っている。

 全員顔に向こう傷を持ったゴリマッチョで制服がピチピチだ。


「え? わ、わかりました。ほい」


 スタジオにコワモテのゴリマッチョ警官10人が現れ、地糸、それから判日と折柄の身柄を拘束した。


「貴方がたを外患誘致罪の容疑で逮捕します」


 警察の言葉に、俺は早百合次官へ尋ねた。


「外患誘致罪ってなんですか?」

「うむ。外国勢力の軍事利益になることをして日本国を脅威に晒したモノに課せられる罪だ」

「確か、刑法上もっとも重い罪で、死刑になるんですよね?」


 美稲の補足説明に、三人は断末魔の叫びもかくやという絶叫を上げて警察に抵抗した。


 警官たちと殴り合いを始め、公務執行妨害、暴力罪、傷害罪、器物破損など、雪だるま式に罪を増やしている。


 その姿に、さっきまでの怒りや悔しさはすっかりしぼみ、もはや哀れでしかなかった。


「早百合次官、あの三人はどうなるんですか?」

「わからん。全てはこの時期担当の志系隙之助(しけいすきのすけ)裁判官と夕財各貞(ゆうざいかくてい)検事に委ねられるだろう」

「…………」


 三人に待つ漆黒の未来を夢想しながら、俺は黙とうを捧げた。



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 本作、【スクール下克上 ボッチが政府に呼び出されたらリア充になりました】を読んでくれてありがとうございます。

 みなさんのおかげで

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 達成です。重ねてありがとうございます。

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