第36話やばいやつ
遠い目をしながら彼らを見ていると、周りが騒ついているのに気が付いた。
「ロリコン?」
「漆黒が長文喋ってる」
「幼女だと!?」
「え、可愛いの?見たい」
「誰だ、漆黒が死んだとか言った奴」
「人違い?」
などなど我々のことですね。
……目立ってるーー!!
私はまだ喋ってるジーンをバシバシ叩いた。
まぁ、効果音的にはバシバシじゃなくてペチペチだけどね。
くっ、幼女の非力さよ!!
しかし、気にせず私の顔を覗いてくるジーン。
「どうした、ヒヨリ」
「…すごく目立ってる」
「アン」
「私のせいにしないで下さい」
いや、お二人のせいですからね?
罪の擦り付け合いはやめましょう。
「さっさと採取依頼書を寄越せ」
「知ってました?普通はあそこから自分で取ってくるんですよ?」
「ヒヨリが潰れる」
「ここにあります」
何、このコント。
息ピッタリじゃん。
じゃなくて、本当はあの人混みの奥に貼られてる依頼書を取って来なきゃいけないんだ。
ちょっと気になるけど、ジーンの言う通り潰されそう。
ちっちゃいしなー。
よ、幼女だからね!?
大人だとモデル並のスタイルだからね!?
…すみません、盛り過ぎました。
「いいですか、ヒヨリちゃん。ここの左上にランクが書いてあります。そして真ん中に欲しい物、この場合はヒカゲ草の絵と内容ですね。ポーションの材料にしたいそうなので、最低10束。上限はないそうです。何か分からないことはありますか?」
「10束で1,000マルって書いてありますけど、これって安いですか?高いですか?」
因みにマルは通貨単位だと事前に先生に教えてもらった。
「そうですね、今は高いですね。やってくれる人が少ないから上がっているんですよ」
「なら取り過ぎちゃうと安くなるんですか?」
「ポーションの材料ですから、そうそう安くなりませんよ。それに採取の仕方が上手かったり新鮮な物ばかり取ってくる方は指名依頼とか来て、逆に上がるなんてこともありますね」
なるほどね。
あ、そういえば、薬草いっぱい持ってた。
買い取りもしてもらえるかな?
ヒカゲ草もあるかもしれないし。
「アンさん、私薬草」
持ってますって言おうとしたら、口をジーンに手で塞がれた。
何するの?と睨んでもジーンは無表情。
あ、あれ?
怒ってる?
「ジーンさん、何してるんですか?ヒヨリちゃん、何を言い掛けたんですか?」
「取った薬草がいっぱい持てないって言おうとしていたから、俺の鞄があるから大丈夫だと思ってつい、な」
「?そうなんですか?まぁ、でも確かにそうですね。ヒヨリちゃんの鞄だとあまり入りませんからね」
そう言われて私はハッとした。
ここで薬草いっぱい出したら鞄のことバレるじゃん!
あっぶなー!!
ナイスジーン!!
「やっぱり収納鞄って高いの?」
「そうですね。小さくても10万マルは最低でもしますね」
「薬草1,000束分…」
「内容量が大きいとやはり100万、1,000万はしますよ。因みに小さいのは馬車一台分と言われてます」
…これ、バレたらまずいやつや。
本当にありがとう、ジーン!!
「麻袋をいくつか用意しておきましたので、これに入れて持って来て下さい」
「ありがとうございます」
「ムリはジーンさんに押し付けて安全に頑張って下さいね」
「は、はい」
あ、あれ?
なんかデジャヴ。
というか2回目だ。
どんだけジーンにムリを押し付けたいのだろうか?
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