第35話やっぱり残念な人だなぁ

宿の外で適当に食べ終わったあと、ジーンが真剣な眼差しで言ってきた。


「さて、冒険者になったからには依頼を受けなくてはな」

「依頼」


復唱すると、そうだと頷いた。


「さすがにヒヨリに魔物を倒せなんて無茶は言わない。ヒヨリが調薬師になるなら、それより安全で身になる薬草採りの方が良い。但し、薬草と言っても1種類じゃないし、場合によっては危ない場所にもあるだろう。まぁ危ない場所は行かないか、俺が一緒の時じゃなきゃダメだ」

「逆にジーンと一緒じゃなくても良い時はあるの?」

「…それもそうか」


ジーンは私の顔をじっくり見た後納得した。

私1人じゃいつまた攫われるか分からないからね。

人と魔物、両方に気を付けなきゃいけないなんて、運命の神様、恨むわ。

せめて大人だったら…いや、変わらない未来しか見えないわ、コレ。

本当に恨むべきは自分の能力の低さだ。

せめて、せめて頭が良かったら良いのにッ!!


とりあえず店を出て、もちろん私はジーンに抱っこしてもらってギルドにやって来た。

マントは被ってるけど、小さいせいとジーンに抱っこされている事で目立っていた。


どうしよう?

私のせいで絡まれたりしませんよね!?


「あ、ヒヨリちゃん!と、ジーンさん、おはようございます!」


いつの間にかアンさんが目の前でにっこり笑っていた。


「え?あ、おはようございます」

「…おはよう。最早お前にとっては俺はついで扱いか」

「うふふ、何のことだか分かりませんね!」


ジーン慣れているのか平常運転だ。

アンさんもにこにこしながら対応してる。


「薬草の依頼ですか?沢山残ってますよ!」

「いや、それ逆にダメなんじゃ…」

「そうなんですよ、ヒヨリちゃん!皆、そんな事より魔物退治だとかなんとか言ってやってくれないんですよ!ついでに頼んでもちゃんと摘んできてくれなくて困っちゃってるんですよ!」


かなり鬱憤が溜まっていたのか、勢いよく吐き出された言葉はまさに怒り心頭である。


「まぁ、確かに地味ですし?階級も上げるには魔物討伐は必須ですけども、薬草採りもバカには出来ないんですけどね!」


はぁ、まったく、とお疲れですね。

色々仲裁なんかもしてそうだし大変そう。

だから項垂れてるアンさんの頭をついなでなでしてしまった。


「えっと、アンさんは頑張ってると思うよ。すごい」

「そうだな、アンはすごいな」

「これからは薬草採りは私が頑張るから元気出して」


アンさんは私達の言葉にプルプルと震えてガバッと顔を上げた。

そして私に飛び付こうとしたのでジーンに止められた。

まぁ、そうなるよね。


「なんで!?そこはハグの場面じゃないですか!?」

「お前のは下心だ。あわよくばヒヨリを抱っこして可愛がり尽くしたい顔をしている」

「それ、ジーンさんもじゃないですか!?」

「お前と一緒にするな。確かにヒヨリは可愛いが、嫌がることは全くしていない」

「このロリコンー!!」

「ヒヨリをそんな目で見るな。ヒヨリ、アンには1人で近付いちゃいけない」

「私がロリコンにされた!?違いますー!私は小さくて可愛い子が好きなだけで性別も種族も問いません!」

「尚悪い」


…うん、仲良いのは良い事だよね。

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