第9話知ってた、お約束だよね
「良かったらどうぞ。足りなかったらご飯、こっちのを入れて食べても美味しいです」
自画自賛かもだけど、上手に出来たと思うよ!
先生のレシピに間違いはない!
「…お前が作ったのか?」
「はい。だから簡単なものだし材料も適当に千切っただけなのでバラバラ…で、でも美味しく出来たと思います!」
「そうか。小さいのに偉いな。有り難くいただく」
フードの人は一口食べてピタリと止まったと思うと一気に食べ切った。
「美味い。…おかわりをもらってもいいか?その、出来ればそっちのも入れて欲しい」
少し戸惑いながら言う姿は微笑ましい。
いいよいいよ、たーんとおあがり!
私は一体誰目線なのか、そんなことを心でニマニマしながらおかわりを差し出した。
一息吐くと、フードの人は頭を下げた。
「幼いというのに何から何まですまない、助かった。俺は冒険者のジーンという。名乗りが遅くてすまない」
「い、いえ、そんな!あ、私はヒヨリといいます!」
「ヒヨリか。可愛らしい名前だな」
「ありがとうございます」
ふへへ、私の中でのジーンさんの株は上がってるぞ。
まぁ、とはいえこの時点ではいい人かどうか分からない。
ご飯は美味しそうに完食してくれたけど、フード被ったままだし怪しすぎるよね。
「あー、ヒヨリはこれからどうするんだ?街へ行くなら送るぞ」
「えーと…」
それなんだよねー。
街に行って安全かといえばそうじゃない。
獣族に寛容な人もいると思う。
けど、何となくそうでない人が多そうと私の勘が言っている。
だからといってこのまま森で暮らすのもムリだ。
というかそろそろお肉が恋しい。
「何かで悩んでいるのか?聞いていいなら聞かせてもらえないか?」
ジーンさんは私が5歳児というのにちゃんと子供扱いしないで対応してくれる。
そんな人だから話してみてもいいんじゃないかという自分と拒絶されるんじゃないかという自分が居る。
私が人族なら、誰かの子として産まれていたなら、記憶がないなら、もしそうなら私はこんなにも悩まなくて済んだだろうか?
私はごくりと唾を飲んだ。
「ま、街には獣族は居ますか?」
ちょっと上擦った声をどう思っただろうか?ドキドキしながら私はジーンさんの反応を待った。
「獣族?あぁ、居るな。冒険者にも居るが…もしかして獣族に何かされたのか?」
「いいえ、違います!」
「ふむ…ならヒヨリ、お前が獣族か?」
勢いよく否定しすぎたのかも知れない。
強張る身体で気付かれたかも知れないと緊張が身体を支配する。
「あぁ、なるほどな。獣族狙いの馬鹿共に攫われたのか。大丈夫か?どこか怪我していないか?ああいう輩は人族主義者が多い。酷い扱いを受けていたんじゃないか?」
「あ、あの、ジーンさんは…」
「ん?あぁ、そうか。言葉で言っても信じられないかも知れないが獣族に偏見や思う所はない。安心してくれ、と言ってもムリか」
優しそうな声で言うけど、いや、恐らく本当に優しいのだろうけど、身体が強張って動かない。
ジーンさんは躊躇しながらも、自分のフードを取った。
そこには馴染みのある黒髪黒目の、しかし俳優顔負けのイケメンが居た。
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