第6話いざ脱出作戦
『ヒヨリ、チャンスです』
私の頭の中で先生の声が聞こえた。
しかもどこか喋り方が前より人間寄りなような…と思ってた私に爆弾を落とした。
『以前は魔物だけの気配を探っていましたが、人の気配を探ることも可能になりました。今、冒険者らしき者達が多数、外で彷徨いています。おそらく人攫いの情報がギルドに届いたのでしょう』
え、なんでそんなこと分かるの?
『知識を更新しました。所謂レベルアップというものに近いです。何かをさがしている様子と魔物を倒していることを合わせて冒険者と認識。客が来ると気を緩ませている人攫い達を欺いて逃げるならば今しかありません』
でもどうやって?
今牢屋の中だし、奴らが来る時は3、4人来る。
隙なんてない。
『ヒヨリには鞄があるじゃないですか。幸い地面は土です。収納して穴を掘りましょう』
え?
え、ちょっ、ま、えっ、そんなんありなの?
『ありです』
うわー、鞄チートやべぇ。
それでなくとも鞄のおかげでご飯もちゃんと食べれたのに。
お水は大事だよね。
と、とにかく、皆に伝えなきゃ!!
「あ、あのね、私に考えがあるんだけど聞いてくれる?」
まぁ、私の与太話に付き合ってくれるなら、の話だけど。
「考え?一体何だよ?」
「あのね、人攫い達が客が来るって浮ついてるじゃん?だから逃げるなら今だと思うの!」
「ダメよ、ヒヨリ。以前も隙を付いて逃げたけど捕まってしまったわ」
「そ、そうだよ。それに何処から逃げるって言うのさ?」
「私にはとあるスキルと鞄があります!」
ででーんと効果音が付きそうな程胸を逸らすと皆に呆られた。
しかも翼がまだ痛くてちょっと泣きそう。
「ヒヨちゃんはどんなすきる?があるのー?」
可愛く聞いてくれるミヤだけが私の癒しだよ!
ミヤの頭を撫でながら、私は大まかに先生のことを言った。
「実はスキルがちょっとレベルアップして、外の様子が分かるようになったの」
「え、外の様子!?」
「外の様子って何が分かったんだ?」
「あのね、なにか探してるみたいな人が魔物を倒しているみたいで、だから多分冒険者じゃないかなって」
「探してるって…」
「多分人攫いのことだと思う。だからね、今のうちがチャンスじゃないかなって」
「でもどうやって?」
「私の鞄で!」
皆ポカーンと私を見た。
ニヤの顔は若干、何言ってんだこいつである。
でも皆、私の鞄が収納鞄ということは知っている。
じゃなきゃごはんや水や薬草なんて出ないよね。
「私の鞄はちょっと特別で、色んなものが収納出来るの」
「う、うん。知ってるけどそれが何なの?」
「土を収納して穴を掘って脱出します」
皆目が点になった。
分かるよ、それ分かる。
私もそうだったもん。
「え、そんなんあり?」
「ありです!」
先生が言うにはね!
「けどそれなら確かにチャンスかも知れない」
「でしょ!?」
「その鞄は一気に掘る…というか収納出来るのか?」
え、えっと、出来るかな先生?
『可能です』
「出来るよ!」
「じゃあ出たらバラバラに逃げよう。近くに冒険者が居るんだろう?バラバラで逃げれば誰か捕まっても誰かが冒険者に伝えられるかも知れない。冒険者でも獣族が嫌いな奴が居る」
私達は見張りが来ない時間を見計らって穴を掘ることにした。
「皆無事で」
「大丈夫、きっと上手くいく」
私は鞄を開けて土を収納した。
そしたら音もなくぽっかり穴が空き、光が漏れた。
「空いた!」
驚きながらも私達は静かに穴から出ていく。
そしてお互いの顔を見たら、バラバラに走り出した。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます