第4話最低な奴らが来た

「あの、私5歳だから大丈夫です」

「バカ。それでも5歳だろ。オレの妹の1つ上なだけじゃないか」


そう言って猫耳の少年はちょっと強めに私の頭を撫でた。

この中では1番しっかりしてそうだし、リーダー的な存在なのだろう。

だからか、他の皆に弱い所を見せたくなくて強がっているのだろう。

僅かに手が震えていた。


こんな幼気な子達を攫うなんて!

とは言えど、私自身もその中に入るのだけども。

解せないが仕方ない。

何とかして皆一緒にここから出なくては。


密かに決意していた私の服が不意にくいくいと引かれた。


「あのね、ミヤはミヤってゆーの。おねーちゃんおなまえはー?」


可愛らしく首をこてんと傾げた猫耳幼女は最強です。

お目々もキラキラとしていて答えられずにはいられない。


「私はヒヨリだよ」

「ヒヨイちゃん?」

「ヒ・ヨ・リだよ」

「…ヒヨちゃん?」

「はい、ヒヨちゃんです」


そんな汚れのない目で言われたらムリですよ。

即同意しちゃったよ。

そんな私達のやり取りを微笑ましく見てた皆も名前を教えてくれた。

猫耳の少年はミヤちゃんのお兄ちゃんで“ニヤ”といって13歳らしい。

青い翼の少女は“トゥーリ”で12歳。

犬耳の少年は“ウォン”で10歳。

羊の少女は“メイ”で9歳。


おう、分かりやすい名前だな、私含めて。


とりあえずトゥーリ曰く、獣族と分かられないようにポンチョは着ていた方がいいと言われた。

観賞用として労働力として獣族は人気らしいのだ。

勿論普通に暮らしてる獣族も居るけど多くはないらしい。

そんな事を喋っていると人がやって来た。


「おい、ガキ共喧しいぞ!!」

「また逃げ出そうとでも思ってるのか?…見せしめに1匹くらい殺っとくか?」

「それよりガキとはいえ、メスは味見してもいいんじゃね?」

「お前そういう趣味かよ!」


はははっと笑う奴らはそんな吐き気がするようなことを吐かしやがった。

確かにトゥーリは12歳とはいえ、身体は丸みをおびてきて女の子らしい体付きだ。

しかしメイはまだ未熟であり、そういった対象には普通は見えない。

私やミヤは言わずがな。

なんとか守らなきゃと思ったのは、私だけではなかった。


「はっ!てめぇら普段獣クセェって言ってるくせに、オレらよりよっぽど獣じゃねぇのか?」


ニヤがくつくつと笑うと、トゥーリ達を色目で見ていた奴が逆上した。


「このクソガキがぁ!おい、殺すならこのガキにしようぜ!」

「落ち着け。確かに黒猫なんて不吉なの死んでもいいかもしれないが、悪趣味な蒐集家が予約したんだよ」

「っ、…ちっ!」

「だけど死ななきゃいいって話だからなぁ。死なない程度なら大丈夫だぜ」


そう言うと嫌な笑みで近付いて牢屋を開けた。

皆怯えて下がる中、ニヤだけは奴らを睨み付けていた。


「くそっ!生意気なヤツだな!薄汚い黒猫のくせにっ!!」


ニヤは殴られ吹き飛んだ。

栄養が足りてないのか身体が細い彼が耐えられないのは仕方ない。


「にーに!!やめて、にーにをぶたないで!」

「うるせーぞ、チビ!」


涙目であるニヤに駆け寄ろうとするミヤの腹を蹴って吹き飛ばすと、奴らはにやつきながらミヤに近付いた。


「おーおー、いいボールじゃねーか」

「はははっ!殺すなよ?」

「っ、止めろ!妹に手を出すな!!」


奴らはミヤを本当にボールのように蹴り飛ばし、ニヤを殴ったり蹴ったり甚振った。

皆は真っ青な顔をして震えるしかなかった。

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