第3話そういう種族なんだ
周りを見渡しても木、木、木。
村や街なんて見えやしない。
せめて人の居る近くで降ろして欲しかったな。
そこでスキルの“知識”さん。
なんとお喋り出来るし色々教えてくれる。
AIみたいな機械的な喋り方で冗談とか通じないけど、何となく1人じゃないって感じが出来た。
敬意を込めて“先生”と呼ばしてもらったけど、“知識”さん的には問題ないようだ。
そうこうしつつ野草探し。
やっぱり調味料と米だけあっても味気ないし。
中にはあるあるな薬草とかあったりしてちょっとテンション上がったのは秘密。
食べれる野草とキノコ、木の実などをポイポイ鞄の中に入れていく。
流石に木の上の木の実は取れなかった。
背中に生えてる翼をいくらパタパタさせても1ミリも浮かなかった。
翼は小さいしただの飾りだ。
ちくしょー、悔しくなんてないやい!
先生は有能だ。
マップで魔物がいないか見張りをしてくれたりして、野宿が出来たり川で身体を洗ったり(冷たくて死ぬかと思った)料理を教えてもらったりした。
知識の神様には感謝しかない。
森で彷徨い、4日ほど経った頃だった。
私は初めて人と遭遇した。
しかし、喜ぶ前にその人は言った。
「なっ…、逃げろ!!」
私はその声を聞くと同時に強い痛みが身体に走り、意識が途切れた。
目を覚ました時には鉄格子のある牢屋に入れられていた。
「気が付いたか?」
そう尋ねられ見てみると、そこにはさっき遭遇した人、黒色の猫耳を生やした少年が居た。
少年だけではなく、少年と同じ黒色の猫耳の私くらいの幼女に、青い翼を生やした少女、こげ茶の犬耳の少年に羊の角と耳が生えた少女が居た。
皆悲しそうに目を伏せ、中には泣いている子も居た。
「えっと、」
わたしがどう言えばいいのか迷っていると、猫耳の少年が声を掛けてくれた。
「お前、運が悪かったな」
「えっ、どういうこと?」
「オレらもお前も人攫いに捕まった。獣族の子は高く売れるんだと。オレらは一度脱走してけど失敗した。お前はその時に一緒に捕まった。元はと言えばオレらのせいだな、悪かった」
しゅんと垂れる猫耳。
周りの子も顔色が悪い。
「貴方達のせいじゃないよ。悪いのは私達を捕まえた人攫いのせいだよ!」
「いや、だけど獣族の子を捕まえてたのに見目がいいから捕まえられたんだぜ?お前人族だろ?」
そうだと言いかけて止まった。
私には翼がある。
果たして人族と言えるのだろうか?
心の中で、ヘイ、先生。
私の種族って何?って聞いてみると答えてくれた。
『ヒヨリの種族は獣族(ヒヨコ)です』
あー、やっぱりねー…ってヒ・ヨ・コ!!
やっぱりヒヨコだったのか、この格好!
あんの馬鹿犬め!
まぁ、とりあえず知識の神様に一発殴っといて下さいと祈りながら、私はポンチョを脱いで背中を見せた。
「私も獣族なの」
小さな翼をはためかせ言うと、がばりと青い翼の少女が抱きついてきた。
何事!?
何のご褒美!?
「まだ翼の小さい子が捕まるなんて!!まだ3歳にもなってないんじゃない?」
…3歳?
確か先生に聞いた時は5歳くらいって言ってたんだけどな。
多分成長が遅い種族なのだろう。
…そう思いたい。
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