第2話つまりそういうことか

「可も不可もなくても私の人生です。余計なお世話ですよ!」


そう言って睨むと、私に殴られたこともあってか運命の神様はしゅんと項垂れた。


うっ…、いやいや絆されませんよ。


私はとにかく運命の神様とのやり取りは終えたと切り替え、知識の神様に顔を向けた。


「それで異世界に行くとのことでしたが、転生ですか?」

「ああ、いえ、うーん…何と言ってよろしいのか…。この馬鹿が器を用意したらしいので、そこに魂が入ってもらう感じなので転生といえば転生ですし、転移といえば転移なのですが」

「なるほど。ありがとうございます。因みに転移先はどのような世界なのでしょうか?」

「あのね!剣と魔法の世界だよ!冒険者とか魔物とかいるよ!あと獣人もいるんだよ!」


聞いてもいないのに運命の神様が褒めて欲しそうに説明する。

私はにっこり笑って2度目の拳を振るった。

運命の神様は訳が分からなさそうに涙目だ。


「良く分かりました。神様方、多分私はすぐ死ぬと思いますので次は異世界でない…いえ、せめて記憶のない状態にして下さい」

「まっ、待って下さい!ええ?何でそんな事に??」

「え、だって私体力も運動神経も地球の日本人女性の並くらいですし、料理とかもあまり得意じゃないですし、知識なんかもいまいちですし、魔物に襲われて終了の未来しか見えません」


私が事実を述べると、何故か神様達は慌ててフォロー…というか、プレゼンを始めた。


「い、いや、スキルとかあげるし!大丈夫だよ!?」

「ふむ、因みにどんなスキルかお伺いしても?」

「何でもいいよ!ただ1個だけだけど、その代わり服に耐性付けたりとか、鞄とかインベントリみたいに無限に入るとか、地球の調味料、米、水も無くならないようにとかするから!どうかな!?」

「ふむ、餓死とかはしなくて済みそうですね」


運命の神様がちょっとホッとしていると、今度は知識の神様が提案し始めた。


「では、スキルの方は“知識”なんて如何でしょう?」

「“知識”…ですか?」

「はい。私の分野で申し訳ありませんが、貴女が見たモノ聞いたモノが身に付くものです。例えば、野草などの種類が分かったり、聞いた言語が自動翻訳されて喋れるようになったりします」

「それ、すごく助かります。では、それでお願い出来ますか?」

「勿論です」


私達が和やかに喋っているのを見て、運命の神様は何故かしょんぼりし始めていた。


「えっとえっと俺の方は…」

「装備も重要ですからね。助かりますよ」


運命の神様はパァーと嬉しそうに笑った。


ちょっと甘いかな?

でも悪いけどなんか犬みたいで無碍に出来ないんだよね。

まぁ、叱る時は殴るけど犬みたいだけど犬じゃないからね。


「では、早速ですが送らせて頂いてもよろしいでしょうか?」

「はい」

「あ、身体はキミに合わせてあるから楽しみにしててね!可愛く出来たから!」


つまり美形ですか。

それはちょっと嬉しい。


「ありがとうございます。でも、もう誰かの運命を弄っちゃダメですよ?」

「はーい!言われない限りはやらないよ」


そこで普通にやらないと言わない辺りがダメなんだよね、この神様。

まぁ、知識の神様が何も言わないから大丈夫なのだろう。


「では、貴女の人生が充実したものになるよう祈っています」

「キミが楽しく生きられることを祈ってるよ!」

「はい。では、行ってきます」

「「行ってらっしゃい」」


こうして私は異世界に来たのだが…



最初に戻るわけだよ。


服はワンピースに黄色いポンチョで愛らしい。

鞄もショルダーバッグになっててこれまた女の子らしい。


しかし、しかしだよ?

顔はともかく、身体を可愛くする必要はなかったんじゃない?


つまり、だ。


私は今、幼女になってる。

ぷくぷくの可愛いお手々に、とてとてと擬音が付きそうな小さく短い足。

声も高く愛らしい。

黄色いサラサラヘアーは肩まであり、違和感を感じてポンチョを脱げば黄色い羽が生えていた。


私の名前は雛野日和。

つまり雛。

しかもひよこっぽくなってません?


私に合わせたって“名前”に合わせたんか、あんの馬鹿犬!!

心で悪態を吐きつつ私は思ったのだ。



「私、終わった」





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