ひよこ日和〜異世界をチートで生き延びます〜

すぐり

第1話とりあえず殴っとこう

「どうしてこうなった!!」




私は森の中で叫んだ。

こうなった元凶は分かりきっている。

あの神のせいだ。



ー数時間前、真っ白な空間の中でイケメンにこう言われた。


「貴女は死にました」


オーケー、意味が分からない。

つまりは何だ?

今こうしているのは魂ってわけか?

そしてこれはあれか?

今流行りの異世界転生ってやつか?


とりあえず私がこうなった理由を聞く必要がある。

まずは手違いなのか、私自身何らかの理由でこうなったのか。


「えっと、とりあえず詳しくお聞き出来るでしょうか?」


初対面の、しかも神らしき人(?)に偉そうには出来ない。

こう考えるとラノベ主人公の心が鋼過ぎる件。

すげぇー。


「私は一応知識を司る神の一柱です。この度はその、運命を司る神の一柱が何を考えたのか貴女の運命を弄りまして、その結果、貴女はお亡くなりになってしまった次第です。申し訳ありません」

「あ、あの、その運命の神様にならともかく、知識の神様は何もしていないんでしょう?なら、謝る必要はないかと…」

「いえ、これでも目付け役に抜擢されておりましたので同罪です」


あ、目付け役が居るくらい元々問題神なんだね?


「と、とにかく、私はこれからどうなるんでしょうか?」


私の予想、外れてくれても良いのよ?

私、異世界行きたくない。


「あの、異世界に行っていただく事になりました」


Oh…。


「あのバカ…運命の神が勝手に『今地球では流行ってるし喜んでくれる』と自信満々で言っておりましたが…そのようではなかったみたいですね」

「異世界行きたくないです」

「申し訳ありません。アレの行動が速く、止める間も無く準備が整ってしまい、決定事項となってしまいました」


あ、運命の神様殴りたい。

私の顔にそんな想いが出ていたのか、知識の神様が指を鳴らすと簀巻きが出て来た。


ポカンとしてると、知識の神様は簀巻きを綺麗なフォームで私の前まで蹴り上げた。

あ、知識の神様も相当溜まっていらっしゃるのね。


「どうぞ、件の運命の神です。煮るなり焼くなり蹴るなり殴るなり殺すなりして下さって構いません」


なんかさらりととんでもない事言われたー!!

簀巻きこと運命の神様も焦りの顔だ。

予想以上に知識の神様がお怒りだったのだろう。


「あの、とりあえずなんで私の運命を弄ったのかお聞きしたいのですが」


知識の神様はどこか残念そうに運命の神様に対して指を鳴らした。

その途端、運命の神様が酷いだの何だの言い出したので喋れなくしていたようだ。

知識の神様が早く話せと言わんばかりに強めに蹴ったので、運命の神様は痛がりながら話した。


「だってキミの運命、可もなく不可も無さ過ぎてつまんなかったから、ちょっとスパイスでも入れてあげようと思ったんだよね。まさか頭にタライが落ちて死ぬとか思わないじゃん?」


つまり、運命の神様は親切のつもりだったようだ。


それにしても……タライ。

私はいつの時代のお笑い芸人だ?

しかもそれで死ぬとか家族や友人に顔合わせれない。

いや、そもそも死んでるから出来ないけども。

寧ろ葬式とかで一方的に見られるんだけども。


なんにせよ親不孝者だ、私は。

とりあえず、運命の神様は殴っとこう。


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