第9話
二回目のデートの日。
本日は動物園に来ていた。しかも、結城の友人はいないということになっている。だが、実際には秀紀や里奈それに愁と修平兄弟も隠れて結城たちのデートを見守っていた。結城が氷に篭絡されないかを心配して――……おもしろがっていたためだ。
誰一人として、普通のデートがなされるとは思ってはいなかった。
結城と氷は、動物園に入った。
イルカの時にも思ったが、どうやら氷は動物が好きらしい。カバやキリンそんな大型の動物を感心しながら見つめたり、リスやプレイリードックの動きを真剣に観察したりした。爬虫類コーナーで、ヘビを触ったりした。爬虫類を嫌がる子が多い中で、氷はそういうものを全くいやがらないタイプの子だった。それどころか飼育員が首にヘビを巻き付けてくれるとちょっと喜んですらいた。
なお、ヘビが苦手な秀紀は氷の行動にちょっとひいていた。
結城もヘビが苦手なのでひいた。
「ヘビさん苦手なんですか?」
氷の言葉に、結城は頷く。
「苦手な人間は多いだろう」
「多いとか少ないとか関係ないですよ」
氷は少し唇を尖らせる。
「自分が好きか嫌いかですよ。みんな、じゃなくて結城さんの意見が聞きたいんです」
氷の言葉が、結城には真摯なものに思われた。
集団の意見ではなくて、結城本人の話が聞きたいというのは。
「俺は、ヘビが苦手だ」
そう話すと氷は、嬉しそうににっこりした。
「結城さんの嫌いなものを知れて、うれしいです」
「見てるには平気なんだけどな」
「触るのがダメなタイプなんですね」
結城さんはもしかしたら触るのがダメなのはもっといろいろあるかもしれない、と結城は言った。
「イルカとかペンギンとか普段触らないようなものも、もしかしたしたら触れないかもしれない」
結城の言葉に、氷は眼を白黒させた。
「私は、そんなことを考えたことがありませんでした。触れるものは触れるし、触れないものは触れない。普段触れないものを触れないかもって、考えるのは……」
氷は、結城を見つめる。
氷は、そっと結城の手を取った。
結城は驚いたが、手を振り払うことをしなかった。
「私には、触れますね。よかった」
「……触れるも何も担いだりもしただろうが」
そう言えばそうでした、と氷は舌を出す。
「また、持ち上げてもらえますか」
「重いからやだ」
「私、そんなに重くないですよ!」
「いや、重いって」
氷と結城は、そう言って笑いあった。
その様子は仲睦まじい兄弟のようだった。
「そういえばハリーポッターはヘビと喋れましたよね」
「あれって、どうしてヘビと喋れたんだっけか」
ヘビコーナーで何故かハリーポッター談義となった。
二人とも忘れていることが多くて、今度結氷の家でハリーポッターの上映会をしようという話になった。
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