第7話
昼食の後には、イルカのショーを見に行った。一番前は水がかかると注意書きが書いてあったので、真ん中あがりの席をとる。氷はイルカが好きらしく、彼らが芸をするたびに目を輝かせていた。結城としてみればショーと言っても、輪をくぐったり、ボールを鼻先でキャッチするだけなので単調になりがちなのでちょっと退屈をしていた。
そんなふうに欠伸を噛み殺しているのをイルカにバレたせいなのか、イルカの鼻が滑ってボールが結城の元へと飛んできた。飼育員も驚いていたので、本当にハプニングだったらしい。飼育員に謝れながら、結城はボールをプールに投げ返した。するとイルカはそれを遊びだと思ってしまい、再びボールが結城のもとへと飛んでくる。
隣を見ると、氷が笑っていた。
花も恥じらうような、笑みであった。
その笑みが綺麗に思えて、結城はちょっと混乱した。自分はロリコンではないし、好きなタイプは年上だと思う。なのに、どうして自分は氷の笑顔を綺麗だと感じているのだろうか。
綺麗なものだから、綺麗だと感じているのだ。
花を美しいと感じるのと同じだ、と結城は理解した。
「いいな」
氷は、結城を羨ましそうに見ていた。
「イルカさんからのサービスがあって」
結城は、その言葉に脱力する。どうやら、氷にとって結城とイルカの攻防戦はイルカ側のサービスに思えたらしい。
「私も、あんなサービスが欲しいです」
氷の言葉に、結城は笑ってしまった。
「あんなのサービスじゃないよ。でも、楽しかったのか」
「ええ、とっても楽しそうでした」
ニコニコと微笑む、氷。
すると、突然氷の肩にオウムが止まった。
氷はびっくりしていたが、これもショーの一部らしい。オウムは他の客にもとまって、飼育員の元に帰っていった。
「あんなことができるんですね」
氷は、本当に楽しそうであった。
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