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年度が変わると同時にそれまで息を潜めていた早田課長が畑違いの部所へ異動することが知らされた。
私だけにとどまらず、これまで数々のセクハラ行為を行っていた早田課長はついに咎められるということで、所謂左遷という形で処置されることになったのだ。
その影響もあり、セキュリティ管理課では大規模な人事異動が行われることになった。
そんな中、私は部長に呼ばれて面談室にいる。
私も異動するのだろうかと想像しつつも、緊張で手に汗をかいている状態だ。
部長の重い口が開かれる。
「朱宮くん。」
「はいっ。」
部長の呼び掛けに背筋がピンと伸びた。
「実は今後IT部門で、管理業務を一元化しようとする構想が出ているんだ。」
「一元化ですか?」
今は各課に庶務がいて、課ごとにいろいろなことを管理している。それを部門で一元管理するとなると、管理業務だけを専属で行うようなチームを作るということだろうか。
「管理業務チームができることになるんだけど、そこでだ、朱宮くん。」
「はい。」
「そのチームの庶務のリーダーに推薦したいと思う。初めてのことだし我々も手探り状態のままお願いするわけなのだが、朱宮くんには是非頑張ってほしい。引き受けてくれるかね?」
庶務のリーダー?
私が?!
まさかの推薦に身が引き締まった。
男性しか出世の道はないと言われているこの会社で、出世とまではいかないにしろ自分を評価してもらえリーダーに推薦されことが素直に嬉しかった。
仕事も恋も順調だ。
ますます頑張ろうと、気持ちが新たになった。
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