63
*
出勤するなり祥子さんがものすごい勢いで寄ってくる。何事かと警戒しつつも私は挨拶をした。
「祥子さん、おはようございます。」
「姫ちゃん、指輪!」
挨拶もそこそこに、祥子さんの視線は私の左手だ。
樹くんにもらったピンクダイヤの指輪はデザインも落ち着いていて仕事に支障はなさそうなので、そのまま嵌めてきた。なにより、左手の薬指に指輪が嵌まっているという事実が嬉しい。
ただ、やはり他人に指摘されるとそれなりに照れてしまうもので……。
「えへへ。」
控えめに見せながら照れ笑いをすると、祥子さんは腕を組んで感心したように頷いた。
「さすが姫ちゃん。すぐ彼氏ができるのね。」
「ぐぐっ、絶対姫乃さんより早く彼氏作ろうと思ったのに負けました。」
いつの間にか一緒に覗き込んでいた真希ちゃんが唇を噛みしめる。
「格が違うのよ、真希ちゃん。」
「悔しい~!お幸せにっ!」
カラカラと笑う祥子さんに背中を叩かれて、それでも真希ちゃんは祝福してくれるので、私は丁寧にお礼を言った。
真希ちゃんこそ、可愛いし若いし積極的だからすぐに彼氏ができそうな気がするけれど、案外そうでもないらしい。
人の出会いとは何とも不思議だ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます