62

ふと目を覚ますと部屋は明るかった。

もう朝なのかと起き上がろうとするも体に感じる重みに不思議に思う。

寝ぼけ眼で確認すると、隣に樹くんが寝ていて私を抱きしめるかのように腰に手が回っていた。


そうだ、私樹くんと……。


昨晩の甘い時間を思い出すだけでまた体の芯が疼き出すようだった。


「おはよ。今何時?」


私がごそごそしていたので樹くんも起きたようだ。手元の時計を確認する。


「やばっ。あと15分で朝食の時間だよ。寝過ごしちゃった。私、顔洗ってくるね!」


私は乱れた浴衣のまま洗面台へ走った。

水を掬おうと手をかざすと左手に違和感がある。


「え、なにこれ?」


顔も洗わず大慌てで部屋へ戻る。


「樹くん!」


「どうしたの?」


「こ、これ。」


私は左手を樹くんに差し出す。

薬指にはキラリと光る指輪がはまっていた。


「姫乃さんにプレゼント。」


「あ、あり、ありがとう。嬉しいっ。」


初めて恋人から貰った指輪。

自分でするおしゃれリングとは全然違う。

胸がいっぱいになってとたんに手が重みを増す。


手をかざしてみるとピンクダイヤが朝日を浴びてキラキラと輝いた。

あまりの眩しさに私は目を細める。


「嬉しいのはわかったけど、早くしないと時間。」


「あっ!」


バタバタ支度する私を、樹くんはクスクス笑いながら見ていた。

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