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お開きになり、楽しい気分のまま私は祥子さんと駅まで歩いていた。真希ちゃんは他部署の男性と仲良くなったらしく、こちらに戻ってくる気配はない。さすがと言うべきか、私は祥子さんと共に感心する。


駅でICカードを出そうとカバンを開けると、カードがどこにも見当たらない。そればかりか、一緒に入れていた社員証もなかった。

とたんに血の気が引く。

どこかに落としたのだろうか?


「祥子さん、私カードを落としたみたいだから探してきます。」


「えっ?大丈夫?」


「大丈夫です。先に帰っててください。」


私は来た道をキョロキョロしながら引き返した。

会場から駅まではカバンを開けなかった。

だから落としたとしたら会場だと思うんだけど…?


普段社員証とICカードを一緒にパスケースに入れている。ICカードは残高が少ないからまだいいとして、問題は社員証だ。

うちの会社は社員証を落とすとセキュリティ事案となって始末書ものになる。怒られるどころか評価も下がり、始末書と反省文まで書かなくてはいけなくなるのだ。

なんとしても避けたい。


「姫ちゃん。」


声をかけられ顔を上げると、そこには早田課長が立っていた。


「どうしたの?」


不思議そうに尋ねられ、私は正直に話す。


「実は社員証を落としてしまって。」


「セキュリティ事案だよ?始末書もの。」


「はい、すみません。探してきます。」


私は早田課長に一礼すると、また会場に向かって歩き出した。


「なんてね。はい、拾っておいたよ。」


その声に私は慌てて振り向く。

早田課長の手にはパスケースが握られていて、私はそれを受け取る。

確認してみると、間違いなく私の写真付きの社員証とICカードが入っていた。


「わあ、ありがとうございます!」


「気を付けないとダメだよ。」


「すみません。」


怒られるかと思いきや、見つけてくれただけでなく優しく声をかけてもらえ、私は心底ほっとした。

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