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「今日楽しかったね。」
「そうですね、美味しかったししゃべりすぎて疲れました。」
「僕はちょっと飲みすぎたなー。」
そう言う早田課長は少しフラフラしている気がする。一人で後からゆっくりと歩いてきたところを見ると、やはり飲みすぎなのかもしれない。
「大丈夫ですか?少し休みます?」
「そうだね、休憩していこうか?」
「どこかで休みますか?」
「うん、一緒にお願い。」
早田課長は私にもたれ掛かるようにしたかと思うと、反対側の肩に手を回して引き寄せられる形になった。
そんなに酔っているのだろうか?
一人で歩けないほどに飲みすぎてしまったのかな?
私はそっと背中を支えてあげる。
早田課長に合わせて歩いていくと、キラキラとしたイルミネーションのついた建物がたくさん並ぶ道に出た。
ここは何だろう?
こんなところに休憩するところがあるのだろうか?
キョロキョロと見回すと、休憩や宿泊と書いた看板が目についた。
え、もしかしてこれってラブホテルってやつでは?!
行ったことがないので確証は持てないけれど、明らかに普通のビジネスホテルとは違う。
「ちょっと早田課長、どこに行くんですか?」
「ちょっと休憩するだけだよ。何もしないから。」
「私、帰ります。」
離れようとすると、肩を掴む手に力が込められる。
「何で?いいじゃん。」
「ダメです。」
私が強く言うと、早田課長は不思議そうな顔をした。そしてチッと舌打ちをする。
「ねえ、俺が誘ってあげてるんだよ。嬉しいだろ?今までいろんな男と寝てきたんだろうし、別にいいじゃん。」
普段の声とは違う低く脅迫めいた言葉に、私は身の毛がよだった。
掴まれた肩が痛くてじんじんするばかりか、怖くて上手く声が出せなくなった。
やめてください、助けてくださいと喉元まで出ているのに、心臓をぎゅっと捕まれたように痛い。
抵抗むなしく、引きずられるようにホテルの入口まで連れていかれた。
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