48
ようやく部長と課長から解放され、私は一旦トイレへ行った。
部長も課長も嫌いじゃないけど、長話は気を遣うし疲れてしまう。鏡で自分の顔を見ると、何だかぐったりした顔をしていた。
トイレから出ると、私はこそこそと端の方のベンチで一休みをする。メイン会場からはちょうど死角になる感じで、誰もこなくて静かで心地いい。
わいわいと楽しそうな声を聞いているだけで私も楽しい気分になってくる。普段から割りと仲のいい職場だから、こういうイベントでも本当に盛り上がる。いい職場だなぁなんてぼんやりと考えてふふふと笑った。
「隣いいですかー?」
「あ、はい、どうぞ。」
突然声をかけられ、私は慌てて少し横にずれる。笑ってるのを見られちゃったかしら。
「はい、ビール。」
差し出されるビールから視線を辿ると、そこには樹くんが座っていた。
「え?あ、樹くん!」
私の驚きに、樹くんは呆れたように笑う。
「どうせ回りに気を遣ってばかりで飲み食いしてないんでしょう?」
「あー、そんなことー、」
そんなことないと言いたかったのに、樹くんのじとりと睨む視線に耐えられず私はコクリと頷く。
「うん。そうです。」
どうやら樹くんにはお見通しのようだ。
もう私は笑うしかない。
「食べ物持ってくるからそのままここで隠れてて。」
「隠れる?」
「姫乃さん一人でいるとすぐ誰かに声かけられるから。」
樹くんの指摘に私は笑うしかない。
「あはは、はあい。」
そのまま大人しく座って待つことにした。
ビールが空きっ腹に染みる。
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