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「えっ!姫乃さんセクハラされてるの?」


改めて、渚ちゃんの分も夕飯を準備して三人で食卓を囲む。しょうが焼きを食べながら、渚ちゃんが驚きの声を上げた。


「やっぱりセクハラなのかなぁ?」


「セクハラだろ。」


「自覚なしはヤバイですよ。大事にならないうちに対処しないと。」


「大したことないんだって。」


あははと笑うと、樹くんに鋭く睨まれた。

とたんに先程のキスを思い出して私は項垂れる。


「はい、すみません。」


「ぼやっとしすぎ。もっと危機感を持って行動して。」


素直に謝るも、樹くんはぷりぷりと怒ったままだ。


「お兄ちゃんが守ってあげなよ。」


「守るのは当たり前だろ。渚も社会人になればわかるけど、四六時中見守ってあげられるほど、暇じゃない。ある程度自己防衛をだな…。」


「はい、ごめんなさい。もっとしっかりします。」


樹くんの説教が始まったので、私は早々に謝った。もうこれ以上は怒られたくない。


でもそうだよね。

樹くんは彼氏の練習に付き合ってくれてるだけで、あれやこれやお願いするのは間違っていると思う。

ましてや守ってもらうなんておこがましいにも程がある。

もう29なんだから、しっかりしなくちゃ。


私は改めて気合いを入れた。

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