42
夜、樹くんの家で夕飯を一緒に作りながら、私は切り出した。
「樹くん。私は早く恋人を作らなくてはいけません。」
「年齢的に?」
「ぐっ。それもあるけど。」
樹くんは痛いところを突いてくる。
それはそうなんだけど、今回はそうじゃない。
「焦ると失敗するっておみくじに書いてありましたよ。」
確かにおみくじにはそう書いてあったし気にもしてる。でも焦るものは焦るのだ。だって今日あんなことがあったし…。
「恋人がいないと早田課長の慰めに合うんだもん。」
「…なんだそれ。」
「そうやって言われた。だから早く彼氏がほしい。」
テーブルに箸とコップを並べながら軽く言うと、樹くんの眉間にシワが寄った。
「またセクハラ受けたの?」
怒ったような口調に私は少しビクビクしながらも、コクンと頷いた。
樹くんは大きなため息をつく。
「課長と二人きりにならないこと。」
「でも会議の準備とか断れないし。」
「訴えていいんだよ。」
「だって上司が課長だもの。誰に相談したらいいか。」
樹くんはまた大きなため息をつくと、ソファーにどっかりと座った。
「姫乃さん。ちょっと。」
手招きされるので不思議に思うもほいほい寄っていく。
「なあに?」
「あのさ、」
「きゃっ。」
言うや否や手を取られ、そのまま強い力で引き寄せられてソファーに押し倒された。
両腕を押さえられ身動きできない。
樹くんは私の腕を押さえたまま、上から見下ろしてくる。
「こうされたらどうするの?どうやって逃げるの?」
確かに、腕をほどこうにも男の人の力には全然敵わなくて、私にはどうすることもできない。
「姫乃さん無防備にも程がある。」
冷たく言われ、思わず目頭が熱くなった。
そのまま樹くんの顔が近づいたと思った瞬間、唇を激しく奪われた。
「んんっ!」
角度を変えて何度も何度もするので、私の息は絶え絶えになってしまう。そんな私を楽しむように、樹くんは不敵に笑った。
「キスくらい簡単にできるからね。肝に銘じて。」
ようやく腕がほどかれたのに私は衝撃のあまり動けなくて、結局樹くんに起こしてもらった。
なんかいろいろ情けなくてため息が出てしまう。
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