41
午後一で会議があるため、私は早田課長に命ぜられて昼休憩を早めに切り上げて会議室内で機材や資料の準備をしていた。
「昼休みを潰してしまって悪いね。」
「いえ、大丈夫です。」
「オンラインで参加するメンバーもいるから、できればパソコンの画面を使いたいんだけど。」
「それなら画面共有がいいかと思います。」
「なるほど。操作教えてくれる?」
「はい、じゃあ一度やってみますね。」
私はパソコンのSkypeを起動する。
早田課長は私の横に立ち、パソコンを覗き込んだ。
一通りレクチャーした後、早田課長はおもむろに私の肩に手を置いた。
「ねえ、恋人と別れたんだって?」
「え?ええ…。」
突然のことにビクッと動揺する。
早田課長にまでそんな噂が流れていて、しかも直接聞かれるなんて思いもよらなかった。
早田課長は私の耳に口を寄せると、囁くように言った。
「じゃあ今は一人?僕が慰めてあげようか?」
「慰める?」
「大人なんだからわかるだろ?」
言われた意味がわからなくてきょとんとなった。だけどすぐに樹くんの言葉を思い出した。
─大人なんだからわかりますよね?
─セクハラされてますよ。
ぶわっと一気によみがえり、とたんに顔が熱くなる。
「い、いえ、結構です。間に合ってます。」
「そう?いつでもおいで。」
ふっと耳に息がかかり、思わず身をすくめた。
そんな私の態度を楽しむかのように、早田課長は隣に座る。
私はガタッと席を立ちペコリと一礼して、逃げるように会議室を出た。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます