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結局どうすることもできないまま、流れに乗って祥子さんについてきたわけなんだけど…。


「でさ、原因は何なの?何で別れちゃったわけ?」


「なんででしょう?」


祥子さんからの問い詰めに上手い嘘がつけず、私は愛想笑いでごまかす。


「何でってもしかしてフラれたの?」


「あ、そうです。そうなんですよー。」


「姫乃さんでもフラれることあるんだ?」


真希ちゃんが珍しいものでも見るような目付きで私を見る。更にあははと愛想笑いをすると、はーとため息をついた。


「百戦錬磨かと思いました。」


「まさか?全然モテないよ。」


「いや、ありえないです。私に対する当てつけとしか思えません。」


真希ちゃんはビールをグビグビと飲むと、恨めしそうに言った。

いやいや、なんでそうなるの?!

対処しきれない私は祥子さんに別の話題を振る。


「祥子さん今日旦那さんは?」


「ひとりでコンビニ弁当じゃない?旦那に今日飲みに行くって言ったら、俺も行きたいとか言ってたわ。意味不明。」


「旦那さん、祥子さんと一緒にご飯食べたいんですよー。ラブラブですね。」


祥子さんは、ないわーと言いながらビールを煽った。

そういえば今日は樹くん、夕飯どうしたんだろう。

そう思った瞬間、何かが結びついた気がした。


「あの。俺との夕飯より飲み会優先するんだねって怒るのって普通…ですか?」


「なに、もしかして別れた理由ってそれ?」


「いや、あの。」


「嫉妬だよねー。独占欲っていうかさ。束縛?」


「それは嫌だなぁ。あー、でも私、少しは束縛されたいかも。」


「真希ちゃんMだね。」


好き勝手言う二人はゲラゲラと笑った。

でも私は笑えない。

樹くんのあの言葉は、もしかして嫉妬だった…とか?

私の考えすぎだろうか。

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