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「ところでお兄ちゃんのカバンについてるこれ、何?」


渚ちゃんが手に取るそれは、今日博物館で購入した金色ストラップだ。


「金印。」


「なんで金印っ!?」


「漢委奴国王印の特別展に行ったから。」


「はい?」


さっぱりわからないといった顔でこちらを見るので、何だか可笑しくて笑ってしまった。


「私が行きたくて、博物館についてきてもらったの。」


「今日二人で出掛けてたの?」


私と樹くんを交互に見ると、樹くんがチッと舌打ちをする。


「そうだよ、このお邪魔虫め。」


「ごめーん。」


渚ちゃんは手を合わせてごめんなさいのポーズをした。

私は自分のカバンも手繰り寄せて渚ちゃんに披露する。


「私も付けてるんだよ。お揃いなの。可愛いよね。」


手のひらに収まるサイズの金印。

キラキラ輝くそれは、レプリカなのに昔の息吹が感じられてとても素敵だ。


「なんていうか、金印よりも姫乃さんが可愛い…かな。」


「わかる。」


「えっ、なに?私わかんないんだけど。兄妹で納得し合わないでくれる?」


渚ちゃんと樹くんは顔を見合わせて力強く頷いた。

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