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帰りがけにスーパーに寄ると、食材の入った袋を樹くんがささっと持ってくれる。
そして歩道の内側を私、外側を樹くんが歩く。
そんな些細な優しさも、私は内心嬉しくてたまらない。
「なんでお兄ちゃんもいるの?」
「姫乃さんが焼き肉にするっていうから。俺も食べたいじゃん。」
さも当然かの如く言う樹くんに、渚ちゃんの不満顔が炸裂した。
思わず苦笑いしてしまう。
「でも家で焼き肉って、臭い大丈夫?」
私は待ってましたとばかりに、棚から大きな箱を取り出す。
「えへへ、じゃじゃーん!煙でないくんってホットプレート買ったの。」
掲げて見せると、渚ちゃんの目が輝き、指をさして叫んだ。
「あー、知ってる!今話題の!」
「使ってみたかったんだー。でも一人だと何だかなぁって思って。やっと日の目を見ることができた。渚ちゃんありがとう。」
テレビで紹介されているのを見ていいなぁと衝動買いしたはいいが、なかなかひとりで焼肉をやる機会がなく今まで封印されていた“煙出ないくん”。ようやく使うときがきた。
「やったー!焼肉パーティー!」
「ね、パーティーだねっ!ビールもあるよ。」
「飲む飲む!やったー!」
渚ちゃんがテンション高く飛び上がり、樹くんはクールに笑った。
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