26

一通り見て回った後、私たちは博物館を後にした。


「お腹すきません?」


「そろそろランチの時間?」


私は腕時計で時間を確認する。

十一時半を過ぎたところだった。


「食べたいものあります?」


「特には…。あ、こういうときは食べたいもの言った方がいいのかな?言わないと優柔不断に思われたりする?」


「は?」


私の質問に樹くんはポカンとする。

いや、真面目に聞いているんですけど。


「あー、そこはそんなに気にしないかなぁ。姫乃さんってほんと真面目だよね。」


「…そこがダメなとこ?」


「そこがいいところ!」


「いいの?」


「いいじゃん。」


と言われても納得できない私は頭を悩ませた。

ちょうど近くの店の前に立てられた幟を見て、私はふと思いつく。


「そうだ、ラーメン屋さんに行きたい。」


「そんなんでいいの?」


「行ったことないの。」


「えっ!姫乃さんってお嬢様?」


「まさか。お嬢様はカツ丼特盛買わないよ。」


「確かに。」


「なんか一人で入れなくて、友達とご飯食べるときもラーメン屋さんってなかなか行かなくない?」


「俺は行くけど。まあ、女の人はそうなのかな?じゃあ行きましょうよ、ラーメン屋。」


樹くんは私の提案をすんなり受け入れてくれ、ここから割りと近くにあるという樹くんお気に入りのラーメン屋さんに連れていってくれた。

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