第9話「ケーキ事件」
それはクリスマス当日に起きた。筆者はクリスマス当日、20時出勤を命じられた。いつもは23時出勤なので、かなり早い時間の勤務だ。何故そんな時間なのか?
実はクリスマスケーキのWEB予約が入ってるのだが、その時入っている人が少々頼りないおっちゃんAさんと外国人の男の子だということだ。不安に思ったマネージャーは筆者に早い時間の勤務をLINEでお願いしてきたので、それに応じた形だ。
WEB予約のクリスマスケーキは数日前に筆者がウォークイン(飲み物の倉庫)にカゴに入れて保管しておいた。クリスマスケーキは箱に入っており、店のカゴに入れ、レシートの裏に予約分と書いて貼り付けておいた。しかし、何か嫌な予感がした……。
やや眠たい眼を抑え、20時に出勤すると、Aさんが慌てた様子で子機を手にし、誰かへと電話していた。しかし、相手に繋がらなかったのか、「……至急、折り返しのお電話をお願いします」という声が聞こえた。
俺「おはようございます。何かあったんですか?」
Aさん「実は……予約していたケーキをひっくり返してしまいまして」
予感的中。
何でもウォークインの作業中に誤ってひっくり返してしまったという。
筆者はやっぱりやらかしたか……と内心ため息をつく。Sさんは以前からミスが多く、客が支払いに使った残額の残っているクオカードを捨ててしまったり(!)、会計でミスをすることも多々あったのだ。
筆者は近所にある姉妹店・B店舗の店長に電話し、どうすればいいか電話で相談した。
「他所の店に箱ケーキが売っているかもしれないから、小夜子くん、大至急、探してきてくれ」
こんな寒い中、コンビニを探し回らないといけないのか……。
職場近くのコンビニは何件か知っていたので、出て急いで向かう羽目に。
ちなみにB店舗の店には求めるケーキは置いてなかった。
1件目、箱ケーキなし。
2件目、箱ケーキなし。
3件目、店員もおらず(恐らく奥にいる)普通のケーキすらもなし。
4件目、箱ケーキなし。
あらかた探したものの、見つからず、スマホの地図片手にしらみつぶしに調べてみる。ここで既に20分過ぎ……引き取りに来るのは21時以降なので、もう少し調べてみるかと思い、更にもう1件コンビニに入る。
そこでようやく発見!!
一応、不測の事態を避けるために2つ購入しておく。
そして店舗に戻り、クリスマスで大賑わいの客を捌いていく。
Sさんは「ありがとうございます!」と何度も頭を下げていた。
21時30分頃、予約客が来た。
「Aさん、予約の方が来たので対応をお願いします」
「あ、はい」
対応はAさんに任せ、俺は他の客を捌くことに集中。いつも以上に客数が多いわ、チキン系が売れるわでなかなか大変。既に眠気は去っており、ベストコンディションで接客が出来たと思う。
Aさんは予約客に商品を無事に渡し、帰って行った。ケーキに使った金は俺の自腹だったが、あとから駆け付けたB店舗の店長に貰えた(レシートも見せている)
Aさんは何度もお礼を言い、何かお返しがしたいというので「美味しい酒が飲めるところを教えてください。今度、飲みに行きましょ」と言うと笑顔を見せてくれた。筆者は外食が趣味な所があるので、割と期待している。
筆者はその後、始発の始まる5時まで働き、ケーキを家に持って帰って、一人YouTube君を見ながら食べたとさ。
続・俗・コンビニ店員と変わり者のお客さんたち 六恩治小夜子 @sayoko
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