第8話「姉さんについて」
今はもう辞めてしまったが、筆者が姉さんと呼ぶ姉御肌が強い女性がいる。彼女は既婚者で、仕事はできるが、自分ルールが強く、締め付けがキツイ人でもあった。そして、物凄く愚痴が多い人でもあった。
自分ルールに少しでも外れたことするとガミガミ怒られ、筆者はそれが嫌で嫌でメモ帳に怒られたことを全てメモし、次に活かした。それでもまた細かいことでグタグダ言われ、それらも全てメモする。この人とは8時間一緒に入らねばならず、なかなか良いストレスになった。改善をひたすら続け、怒られないよう工夫をしたが、いつも細かいことで怒られていた……。
ただ、もっとストレスなのは先輩や同僚の愚痴を言う事だ。ある深夜の仕事中、ある先輩の彼女だと名乗る女の子から電話があり、姉さんが応答。要件を聞いたところ、「彼と連絡取れないんですけどそっちで働いてますよね?」と言われたらしい。
色々経緯を聞くと、先輩と女の子はネトゲ仲間らしい。ただ、最近はログインしておらず、連絡も何もないとのこと。チャットやLINEなども返事がないらしい。先輩が深夜に働いていたのは知っていたので、それで職場にわざわざ電話してきたとのこと。この電話が予想以上に長くかかり、1時間以上姉さんは拘束される羽目になる。
電話が終わるとドッと疲れた顔を見せる姉さん。まだ仕事が残っているというのに別の疲れを感じる二人。それからしばらくしてまた電話が……「小夜子、出て」「いや、姉さんが出たほうが……」「あたしもう出たくない」というので、渋々筆者が出るとやはり例の彼女。
「お電話ありがとうございます。○○(コンビニ名)〇〇店 ろくおんじさよこです」
「すいません、○○さん(姉さんの名前)呼んでくれませんか?」
「あ、はい」
秒で姉さんに変わることに。先輩の彼女はそこでかなり根掘り葉掘り尋ねてきたらしい。
その事件からというもの、姉さんの怒りが爆発。その先輩の愚痴を言いまくるわ、言いまくる。仕方ないとはいえ、筆者は人の愚痴は聞きたくない。なんか聞くだけで仕事より疲れる気がした……。お陰で姉さんと一緒に組む時はいつも憂鬱であった。幸いにも週1日だけで済んだのが良かったのだが。
結論から言うと、その先輩は二股をかけ、どちらも逃げられたようだ。最近はストレス解消を求めてか、バイクで遠出したり、仲の良い職場の後輩たちと釣りをしたりしているらしい。筆者はプライベートでその先輩とカラオケに行ったことも。
すると姉さんは「よくあの男とカラオケ行けるね」と驚いていた。姉さんの悪い所はゼロヒャク思考だ(本人に尋ねたら認めた)一度でも嫌いな奴とレッテルを貼り付けたら、ずっと嫌いなままなのだ。それは永遠に変わらない。ただ、それが周囲の人にも伝わり、実は一度、店を辞めている。コロナ過もあり、旦那の給料が下がり、カムバックしてきたのだ。
だが、筆者からすれば最初に相方になった先輩でもあるし、仲良くするためにマンガ持って行ったり、夏目友人帳のぬいぐるみあげたりと工夫をし、仕事でも頑張り、仲良くなった方だ。プライベートではだらしないかもしれないが、筆者も人に自慢できるような人生だとは口が裂けても言えない。なので、その辺の話は敢えて尋ねることはせず、先輩が話す時だけ聞き専に徹していた。
姉さんは欠点も多いが、何故か完全に嫌いになれない所もある。一度、職場の何人かと姉さん、筆者でスイーツパラダイスに行ったことがある。カップルか女の子同士しかいないあのスイパラだ。どれだけ食べても美味いのだが、意外に腹がいっぱいになるので食べ過ぎには注意が必要である。
また、筆者はある場所にできた京都の抹茶アイス専門店に行きたかった。なんでも京都に本店を置く支店らしいが、一度食べてみたいなと。しかし、店内はやはりカップルか女の子同士しかいない。そこで姉さんを誘って行くのはどうかと閃く。姉さんも快く了承してくれ、何度かスケジュールがずれたものの、行くことができた。
他にも筆者は姉さんと誕生日が同じである。今まで6月生まれに会ったことはあるが、日付まで同じ人は人生で初だった。誕生日にはコンビニで使えるLINEのギフトを送ったりした。しかし、LINEでも○○君がどうで~先輩が△△で~と愚痴を送ってくるのは勘弁してほしかったが。
あと、姉さんは前話で書いた女のように俺の事を無視したりしなかった。確かに怒られることもたくさんあったし、愚痴を聞かされるのはとても嫌だった。洋服のセンスが悪いと言われることもあった。その時、筆者は上下黒一色だったのだが、「あんた暗いんだから服くらいは明るい服着なさいよ!」と言われたことも。
しかし、何故か筆者は嫌いになりきれなかった。プライベートでの交流もあったが、それはもう何年も前の話だ。これが情という奴だろうか。
しかし、体調が悪いという理由(裏の理由はその先輩と一緒に働きたくない)でとうとう姉さんは店を去ることに。姉さんは他のコンビニにも派遣で掛け持ちしているのもあり、その疲労が抜けないとのこと。元々あまり快眠ができない人でもあるそうだが、疲れが限界に来たと本人は述べている。しかし、裏の理由は上記の通りだ。普通にお疲れ様でしたと挨拶は済ませた。ただ、彼女は終始疲れた顔をしており、憑き物が取れたような顔をしていたのを覚えている。
風の噂では旦那さんはとうとう仕事を辞めたらしい。男女平等だと社会やマスコミは言うが、未だに男女で給料に格差があるのが現実だ。二人に子供はいないが、一体どうやって生活していくのだろうか。だが、それは彼ら夫婦の問題で合って、小夜子の問題ではない。
筆者は二人が上手くいくことを願うのみである。
追記 旦那さんは何でもトラックのドライバーさんになったらしい。
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