3.メンバー集めー1ー

 


「うーん。どうしようかなぁ……」


 俺は、机に置かれた目の前の紙を見ながら呟く。


 今、俺が見ている紙は、グループ届けの紙である。

 ここに、5人組になると決めた全員の氏名を書いて、明後日までに提出しなければならない。


(そう、明後日には締め切りで、4日後にはもう実戦訓練だ……だけど――)


 だけど、その紙にはまだ俺とかアルの名前しか書かれていない。



「どうする、コウ?」


 俺が頭を悩ませていると、アルも声を少し震わせながら話しかけてくる。


「ああ。これって結構ヤバいなよな。早くしないとみんな先に決めちゃうよ」


 今はまだ決まったという人は少数派だが、明日にはもう殆どの人が決めてしまうかもしれない。


「そういえば、コウは誰誘うか決めてる?」


「……実は、全く決めてない訳ではないんだけどなぁ……ヘスティアはどうかなって思ってる」


「へぇー、ヘスティアねぇ……いいじゃん!誘おうよ‼︎」


 俺が正直に言うと、アルは一瞬驚いたが、こんな提案をしてきた。


「ほ、本気で言ってる⁈」


「何だよ。コウが先に言ったんだろ」


 驚く俺に対して、アルは口を尖らせながら言い返してくる。


「いやぁ〜、でもさ……なんか、誘いにくいっていうかぁ……」


 慌てて説得しようとする俺の言葉には、どうやらアルも共感出来るところがあったようで、


 ジロリ


 俺もアルも、席に座っているヘスティアを見る。


 すると、ヘスティアが疑う目でこっちを見返してきた。


 サッ!!


 俺もアルも素早く首を動かして、見てませんでした感を無理矢理に作ろうとする。


(今バレたよな!……えーと、何か話を変えなきゃ……‼︎)


「ま、まぁ……い、一旦この話は置いといて、……と、ところでアルは、星については、どう思うかい?」


 俺はめちゃくちゃ動揺しながらも、なんとか言葉を繋げる。


 だが、ここでアルが言葉を返してくれないと意味がない、俺はアルに目配せをする。


 そして、俺の視線に気づいたアルは、意図を分かってくれたように見える。


(さぁ、頼むぞ……‼︎)



?うーん、特にこれといったものは無いなぁ〜‼︎」


(おいっ!それは『星』じゃなくて『推し』だ!! アルの方が動揺してるじゃないか……‼︎)



 トントン


「「えっ」」


 机を指で叩く音がして、振り返ると――



「ねぇ、私に何か用なの?」



 ――不機嫌そうなヘスティアがいた。



「あぁー、えーーと……「コウがヘスティアさんを『是非とも誘いたい』って言ってたんだよ!!」


 俺がなんて答えるべきか悩んでると、アルが割り込んできた。

 そして、何を言うかと思ったら、


(俺のこと売ったよねぇ‼︎)




「ふーん。まあいいわ。私と組みましょう」


 少し細い目で俺を見ながらヘスティアはそう言った。

 そして、紙に名前を書いたら自分の席に戻ろうとする。


(だから何でさっきから不機嫌なんだよ……)


「ああ、そうだ――」


 ヘスティアは後ろを振り返って、俺たちの方を見ながら言う。



「――あなた達のせいで不機嫌なわけではないから」


「「は、はい……」」

 それに対してどう反応すれば良いのか分からず、俺たちはただ頷く。



(どうしてだ?微妙な雰囲気になってしまったぞ‼︎)


 ヘスティアもそんな雰囲気を感じたのか、戸惑うようにしてまた歩き出す。



 ふと俺、は手元にある紙に書かれたヘスティアの名前を見る。


(やっと、3人目……)



「……よ、良かったな、アル」


「……あ、ああ。そちらこそ」


「「……」」





 メンバーが、1人増えた――


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