4.メンバー集めー2ー



「――まだ決まってない奴は早く決めておけよ!……それじゃあ、解散‼︎」


 ミラ先生の言葉を合図に、俺たち生徒は自由に動き出す。


 今は6時で、ここからは自由行動の自由だ。



「さて、どうする?コウ?」


「うーーーん……あっ!」


「ん?どうした!思いついたのか‼︎」


「ああ。――テオス、とかどうかな?」


「……あ、ああ。あの、ピンク色の人だよな……」


 テオスならあの性格だし、もしかしたらまだ組んでいないと思い、俺は提案した。


 だが、案の定アルの反応はあまり良くなかった。


「俺、少しあの人苦手なんだけどな……」


「そこをなんとか!『行ってみたけど、実はもう組んでいた』みたいなこともあるかもしれないし‼︎」


 アルは苦手だと言うが、そこを俺は押す。

 何故なら、大事な行事だからこそ、見知った人とやりたいからだ。

 それに、テオスの実力の高さは・、信用できる。


「うん。そこまで言うなら……」


 なんとか、アルは折れてくれた。


「よし!それじゃあ行こうか!」


「う、うん」


 アルはやっぱり乗り気じゃないが、まあいいだろう。仕方がないことなんだ。



 この時の俺たちは、ヘスティアの意見を何も聞いていなかった事に、まだ気づいていなかった――




 *




「ん?いいよ、一緒に組もう――」


 俺たちが頼み込むと、あっさり返事が返ってきた。


(よし!これで4人目か‼︎)


「――だけど、既に1人組んでいる人がいるから、ちょっと聞いてみないといけないな。

 ハハ!大丈夫。明日の朝には伝えるから。――待ってもらえないかな?」


「ああ、よろしく頼む。じゃあまた!」


 俺たちとテオスは、真反対の方向にそれぞれ離れようとする。

 そこで、後ろから声が聞こえる。


「言い忘れてた。2位、おめでとう‼︎ ハハ」


「あ、ああ。そちらこそ……」


「ハハハ!僕の方が下の順位だからって気を使わなくてもいいのに。

 そういえば、もう1人のヘスティアさんはここにいないみたいだけど、いいの?」


「「あっ」」


 さっきからずっと黙っていたアルも、思わず声を漏らす。


「……もう聞いてあるから大丈夫!」


「そうか。……だといいんだけどね。混乱は防ぎたいからね」


 テオスも俺たちも、また歩き出す。





「どうする?アル」


「今日は無理だから、明日すぐに説得するしかないな」


「だよな。今から明日どうするか少し考えるか……」


 俺たちはその後、約30分をかけて作戦を立てた。

 あとは明日実行するのみ。


 そんな時に、ふと俺たちは疑問に思う。



『テオスが組んでいる相手は誰だろう?』


 どうやってテオスと組むことになったのだろう? 少し疑問だ。




 *




 ハラハラしてなかなか眠れない夜も過ぎて、朝の日が昇る。


 そんな中、俺たちは今、ヘスティアに事情を説明している。

 まるで、朝日の光は、少し緊張している俺たちを暖かく見守ってくれているようだ。




「へーー……つまり、私の許可なく勝手に決めたことを気にしてるわけね」


 事情を話し終えると、ヘスティアは不満とも取れる声でそう言った。



「ごめん!つい忘れてしまっていて……‼︎」

「本当にすみません!」


 そんなヘスティアに、俺、アルの順で、ヘスティアに謝罪をしていく。




 作戦――というのも少し違うのかもしれないが、俺たちが昨日考えた方法は、


『正直に謝る』というものだった。


「別に忘れていたわけではなかった」などという、お決まりのセリフだと逆効果だと俺たちは考えたのだ。

 素直に謝ればきっと許してくれるだろう、そういう心持ちでいくことにした。



「……まあ、いいわ。

 話を聞いたようだと、私を誘ってくれていた子の組と、あなたたちが言っいる組は、同じみたいだし」


「「へっ?」」


 俺たちは同時に情けない声を出す。


(つまり、テオスと組んでいる人は、もともとヘスティアを誘っていた、ということであっているのか……?)


 頭の中で情報を整理している俺に、新しい声が掛かる。



「お待たせー!僕らはオッケーだったよ!そっちは?」


 声がした方を振り向くと、テオスと、女の人がもう一人いた。



「あっ、フローラー‼︎おはよう!」


「ヘスティアちゃんおはよう‼︎」


 その女の人を見ると、ヘスティアは優しい声で掛けながら駆けつける。

 そして、確か、フローラというと、《剣術大会》に出場していた人だ。

 俺は、残念ながらそのくらいしか知らない。ただ、仲良く出来れば良いな、とだけ思っておく。



(ていうか、仲の良い人にはあんな喋り方なのか……)

 俺は、ヘスティアの変わりぶりに少し驚かされる。

 ちなみに、隣のアルを見ると、同じようなリアクションをしていた。


(やっぱり、そう思うよな……分かるよ)



 そんなことを考えていると、当然テオスが俺に耳打ちしてきた。

「丸く纏まりそうで良かったね。たぶん、さっき言ったばかりなんでしょ」



「……っ‼︎ やっぱ気づいてたのかよ!」


「ハハハ‼︎ ――じゃあ、宜しく」


 そして、笑いながらも、テオスは握手を求めるように手を差し伸べてきた。


 俺は突然のことに少し戸惑い、テオスの顔を見上げる。


 すると、テオスは微笑んできた。



(しかし、やっぱり何か似合わないなぁ。失礼だけど……)


 俺は、そんなことをふと考えながら、笑い返して握手をする。




 そして、握手が解かれると、


「ほら、そこの君も」


「は、はい……」


 アルはぎこちない返事をして、握手をテオスと交わす。



(早く、仲が改善されないかなぁ……まぁ、俺も人のことを言えるほど、テオスと仲が良いわけでもないのかな……?)





 かくして、俺の5人組のメンバーは、


 俺コウ、アル、ヘスティア、テオス、フローラ、に決まった―――



 *



 ところで、何でヘスティアは不機嫌だったのだろうか?


 厄介事にならないといいのだが――


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