第4話

「官邸の依頼さ。獣を食う宗教が、気に食わんらしい。実にこの国らしい弾圧だ。で、お前がその尖兵」


「そのために、真朱が死んだのか」


「あの狸。真朱っていうのか。大学までの道すがらで死んでただろ」


「ああ」


「あの宗教が食っていったぞ」


 はじめて。


 自分が、怒っているのを、感じた。


「お。いい顔だな」


「なんでもいいから、殺したい気分だよ」


「ほら。殺してこい。これが殉教者のリストと所在位置だ。街の正義の味方の掩護も付く」


「至れり尽くせりだな」


「まあ、面倒な相手だからな。なんせ狐の幽霊だ」


 狐の幽霊。


「手当たり次第、生きてるものを食ってんのさ。放っておくと、人も食うようになる」


「まあ、だいたい分かったよ。俺がやればいいんだな」


 ペンを持って、部屋を出る。


 歩きながら。


 真朱のことを、考えた。


 自分と会ってしまったせいで。


 真朱は、食い殺された。




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