ブラーハット事件の真相
ブラーハットの村の南西では騎士団が作戦を立てている最中だった。
「よし! 進軍する!」
「今からですか!? もう日暮れですよ!」
「こうしていても状況は変わらない、村の者も夜通しの見張りになるぞ。俺は隊長に賛成だ」
「しかし、暗闇で行き違いになったらどうするんですか?」
「うーむ」
隊長はまたしても考え始めてしまった。
その時、風使いのシャムーンは何者かの気配を察した。
「何者だ!? そこで止まれ!」
「そうもいかんのだ」
可愛い足取りで進むパンタルリン、宝物のように抱え込んだ魔石が夕日を浴びて輝く。
その後ろをついて歩くローブの男。
「お前は!」
「攻撃の意思はない、その練成魔獣が事件の真相へ導いてくれる」
「真相だと?」
夕闇迫るブラーハットの森に風が吹き渡り生い茂る木々がザワザワと揺らいだ。
翌日のライオット通信社の新聞にこの事件が大きく掲載された。
『トレニアス騎士団を欺く、強欲村長逮捕!』
魔物の襲撃を受けた伐採地区に急行した我らがトレニアス騎士団、しかしそこには欲にまみれた罠が仕掛けてあった。あろうことか村の長であるガルダン・カンナスは神をも恐れぬ悪しき企てをしていたのだ。
ガルダンの狙いは村近郊にある打ち捨てられた魔石鉱山、はるか昔に魔力の噴出により閉山されていたのだが、それさえ何とかすれば一攫千金も夢ではなかった。しかし人の手で魔力を封じるは至難の業。そう女神の御業でもない限りは……。
そこで悪党ガルダンは魔物の襲撃事件をでっちあげ、騎士団に鉱山の浄化をさせようとしていたのだ。
彼に騙され協力した魔術師の自白によりこの企ては未然に防がれたが、村には多くの怪我人が出た。
神の従者を欺き、守るべき村民まで囮に使うとは、まったくもって外道の所業であると言うほかない。
ガルダンには重い裁きが待っていることだろう。
特集『またしても現れた噂の勇者』
上記のブラーハット事件には語られぬ物語があった。
そう、皆さまお待ちかねの”勇者様”の目撃情報だ!
現地に急行した記者の聞き込みによると、なんとこの事件の解決に、例の勇者様が関わっていたという新事実が判明!
詳しい情報が分かり次第お伝えさせていただきます。
これからもライオット通信社にご期待ください。
旅する勇者はいつも一人 さだいしるてん @sadaisiruten
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