バリケードの前で
ブラーハットの村南側に作られた即席のバリケード。
村人は斧やノコギリを手に持ち、襲撃に備えていたが皆一様に怯え切った面持ちだった。
バリケードの外側に騎士団の面々が待ち構えていたのだが……。
「暇っすね」
「ああ、暇だな……」
切り株や木材に腰掛けて暇を持て余していた。
「隊長殿ーッ!」
「おお! シャムーン、よくぞ戻った。守備はどうだ?」
「森の奥で不審な男を見かけたので追跡をしました。奴は山奥の坑道で魔物を生成していたようです」
「そうか、ならば話は早い。今からそこへ出向いて討伐してくれよう」
待ってましたとばかりに皆腰を上げた。
「それが、どうにもおかしいのです」
「なぜだ?」
「その男は坑道に結界を張り魔物を封じていたようなのです。結界が破られ魔物に引きずり込まれてしまいましたが……恐らく命はないでしょう」
「主犯は自滅したか、でもまだ魔物がいるのなら早く行こうぜ」
「待ってくれ、その男はこうも言っていた。自分は頼まれて協力したのだと」
「他に仲間がいるってことか」
「ムムム、何か裏がありそうだな……」
隊長が長考の構えを見せた時、場違いな明るい声が響いた。
「騎士様方! 調子はいかがですかな?」
バリケードの向こうから村長が話しかけた。
「問題ありません。どうやら魔物は山奥の坑道からやって来たようです。これから策を講じるところです」
「そうですか! それは何よりです。どうか我らをお守りくださいまし」
「一つ聞いてもよろしいか?」
シャムーンが会話に割って入る。
「もちろんです、なんなりと」
「この村は何者かに恨みを買うようなことはありましたか?」
「まさか、見ての通り貧しい山村でございます。蔑まされることはあっても恨まれることなど……」
村長はにこやかに受け答えをしていたが、村人の面持ちは暗かった。
これ以上無駄に怯えさせるのは得策ではないと考えシャムーンは会話を打ち切った。
「どうします隊長?」
「行きますか? それとも待ちますか?」
「ムムム」と隊長は考える。
それを見て団員たちは再び腰を下ろした。
「隊長は考え出すと長いだよなあ」と心の中では思っていても決して口には出さない部下たちであった。
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