魔石の山
「面白い小僧じゃな、どれ、本物のパンタルリンを見せてやろうじゃないか」
ヨス爺さんは完成品のパンタルリン人形を手に取り、両手で包み込むように魔力を込めた。
すると人形はまるで生きているかのように動き出した。
大人の腕くらいの背丈、猿のようにひょいひょいと愉快に動き回る。
「見ての通りパンタルリンは愛玩用の道具じゃ。子供を楽しませたり、簡単な作業をさせたり。魔力を込める時に命令をすればそのように動き、魔力が尽きれば元の人形に戻る」
「人を襲わせたりすることはできますか?」
「命令次第では可能かもしれんが、見ての通り。これに襲われる者など」
確かに小さいし、すごく非力だ。
「村で見たのは子供くらいの背丈がありました。誰かが大きなパンタルリンを作っているということはありませんか?」
「それはない、ワシほどの巨匠でも作れるのはこの大きさだけじゃ。これ以上は上手く機能しなくなる」
うーん、じゃああれは一体何なんだろう……。
「大量に魔力を込めれば多少膨らむことはあるが、子供ほどの背丈となるとよほどの事じゃな。それに人に怪我を負わすほどともなると……体に魔石でも埋め込まん限りはな」
「魔石……そういえば工房で小さな魔石を使っていましたよね? あれはどこで購入したものですか?」
以前にも魔石を食べて巨大化したモンスターがいたはず。
「その辺で拾ったわよ」
「え!?」
「この辺は昔から魔力の噴出量が多いんだ。だから魔女たちが住み着いたってわけ。小粒の魔石ならその辺に落ちてるぜ」
「ええ!?」
「いっぱいあっても売り物にならないから使える道具を作っているわけだ」
「アレが完成すれば経済革命が!」
「バカを言うな! ワシのパンタルリンが一番じゃ。すぐに第二次ブームが来る!」
放っておくとすぐ商売の話になっていしまう。
「たとえば小さい魔石をいっぱい人形の中に入れてみるとか」
「稼働時間は増えるかもしれないけど大きくはないでしょ?」
ヨス爺さんがうなずく。
「それなら大きな魔石を……」
「バランスが崩れてそもそも起動しなくなるじゃろ」
「ムムム……」
「そもそも本当にパンタルリンじゃったのか?」
「それは……」
「そんなに大きくしたいなら、魔力の噴出口にでも投げ込むしかないのう」
「魔力の噴出口……そんなものないですよね」
「あるよ」と誰かが言った。
「ほら、防人の洞窟」
「洞窟!?」
「昔、魔石の採掘場だった場所?」
「そうそう、魔力濃度が上がり過ぎてすぐに閉山したっていう」
「ちょっと待ってください、その洞窟にはモンスターがいますか?」
「さぁ、聞いたことないけど……誰か知ってるか?」
みんな首を横に振る。
「僕は洞窟のモンスター退治を依頼されてここに来たんです」
でもその洞窟にモンスターはいない。
この辺に他の洞窟は無いという。
村を襲った謎の怪物の正体は巨大化したパンタルリンで、でも巨大化するには洞窟に投げ込まなくてはいけなくて……。
出来の悪い僕の頭ではもう訳が分からない。
何がどうなっているんだ!?
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