流浪の魔術師

「ぴい?」


「さぁね、目的地はないわ。でもせっかくだからしばらくは彼方此方見て回りたいの。あなたの住める場所も探してあげないとね」


「ぴぃぃう」


「ダメよ。使役するためにあなたを魔石から解放したわけじゃないんだから。定住先を決めて、そこで立派な精霊になるの。分かった?」


「ぴぃ……」


「まったく、先が思いやられるわね」




 放浪する魔術師に願い事をしてはならない。とくに光と炎を操る美しい女性の魔術師には。


 彼女は願いに対して法外な対価を要求してくるだろう。


 しかし、それを断る者は皆無であった。


 命と金、どちらを優先すべきかは明らかである。



 そんな噂話を耳にするのは、もう少し先のことになる――――――。

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