旅立ちの日
スクラファさんやり残したことがあると言って城に残ると言い出した。
「手伝いますよ」と言ったらダリーさんに「野暮なこと言いなさんな」と手を引かれて連れ出されてしまった。
外はすっかり朝になっていた。
城内はギルドの人たちで大騒ぎ、何から何まで持って帰るつもりらしい。
村に戻って、ダリーさんの酒場に着くと、急に体が重くなって、僕はそのまま床に倒れて寝てしまった。
目が覚めたのは日が暮れたころ。
どうやらダリ―さんの寝室で寝かせてもらっていたらしい。
やけに騒がしいと思ったら、酒場はギルドの人たちで大盛り上がりだった。
「起きちまったか、まあ仕方ねーやな。今日が最後のお祭り騒ぎだ。あんたも好きなだけ飲み食いしてくれ」
「じゃあ、昨日と同じメニューを」
「おいおい、意地悪なこというなよ。もっと旨いもの作ってやるって。あ! 今しがたあんたのお仲間さんたちも到着してたみたいだぞ、表見てみな」
「げっ!」
トレニアス騎士団の旗を掲げた騎士たちがいっぱいいる。
もう到着したのか。
「よう、今起きたのか。体力のねぇ野郎だ」
「ハロースさん……」
「見ろよ、表の連中の顔。傑作だな! 遠路はるばるやって来たってのにぜーんぶ片付いちまってよ。ウハハハ!」
すでに酔っぱらっているみたいだ。
「おい、ダリー。あれ渡してやれよ」
「お、そうか」
ダリーさんが差し出したのは新品のロングソードだった。
「お前の今回の取り分だ、無所属なんだから文句言うなよ。もうちっとデカくなったら俺のギルドに入れてやってもいいんだぜ。それまでせいぜい気張りな。じゃあな」
「素直じゃないんだから」
ダリーさんが嬉しそうに笑った。
僕が目覚める前にスクラファさんは村を出たらしい。
もとからこの周辺で仕事をしていたから、珍しいことじゃないらしいけど……。
「まぁ、そのうち戻ってくるさ」
「サヨナラくらい言いたかったな」
「あんたも戻ってくりゃいいんだよ。人生は思っているより長いんだから、無理にサヨナラを言う必要なんてないさ、なぁ?」
「……はい!」
「またいつか」その言葉だけを残して、僕はまた、あてどない一人の旅路へ戻ることにした。
第一章 完
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