精霊の力
「ハロースさん! その人たちはもう」
「…………わかってんだよ、そんなことは」
二人は躊躇なく刃を振りかざした。
圧倒的に手数で勝るその二人に対し、ハロースさんはロングソード一本で対抗する。
「こいつらの戦い方は、俺が一番よくわかってんだ」
「加勢します!」
「手を出すんじゃねえ! こいつらは、俺が……」
「残念、時間切れよ」
――世界を喰らいし古き者、闇を食み光を浴びよ、岩に流る赤き血潮を、灼熱の焔に変えて――
「焼き尽くせっ! サラマンダー!」
喉の奥から空気が吸い出されるような感じがした。風が渦巻き辺りが眩く輝く。
アンデットたちは息を吹きあてた炭のように真っ赤に発光して跡形もなく灰になった。
霧が晴れて、月明かりが差し込む。
「今のうちに逃げなさい、すぐにまた霧に取り込まれるわ」
「お、親方!」
「ハロースさん……」
目の前で灰になった仲間をじっと見つめている。
やがて、自分の剣を地面に深く突き刺し、短刀とハンドアックスを手に取った。
まだ熱が残っているのに、ぐっと握りしめて。皮のグローブが焦げ付く音に顔をしかめた。
「撤退だ!」
その一言でみんな霧からの脱出が始まった。
ハロースさんは全員の背中を見送ってから、僕たちを見つめて、何も言わないまま後を追って走り出した。
気性が荒いけど、仲間思いのいい人なのかもしれない。
「あなたも引き返す?」
「いいえ、このまま行きます」
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