ダンジョン攻略戦

「お城にはたどり着けないって言ってましたよね、 秘策があるんですか?」

「ある!」


 ダンジョンへ向かう道には煌々とランタンが掲げられ、道端には商人のキャンプが立ち並んでいる。

 この時間でなければ村の入り口みたいな騒ぎだったのだろう。


「地図を持ってるとか、それとも占いで」

「いい? ロイ君。まず認識を改めて」

「……はい」

「ダンジョンは地上に湧き出た混沌階層カオスレイヤードなの、生み出した者の意思で如何様にも変化するわ。リガルスの願望は拒絶。だからここの特性は”近づこうとすればするほど遠ざかる”覚えといてね」

「はい、でもどうしたら」

「簡単よ」

「え!」

「所詮は幻影、現実には敵わないわ。実在する城に向けて歩けばいいだけ」

「それだけですか!?」

「まあ、当然邪魔は入るでしょうけど」


 進むにつれて霧が立ち込め、ついに辺りが見えなくなくほど濃くなった。

 血痕のついた剣や兜が転がっている。地面は何かを引きずったような跡が。

 

「怖い?」とスクラファさんが聞く。

 僕は「いいえ」と答えたけど、ちょっと怖いかもしれない。

 行方不明者の人相書きや、命の大切さを説く立て看板が連なり、その足元にはいくつもの献花が供えてある。


「視界が悪いから離れないようにしてね」

「はい」

「さあ、石ころから育ててあげた恩を返すときよ」

「え?」

「フフフ、あなたに言ったわけじゃないわ」


 ぽわっと火がともる。松明を持っているわけでもないのに。

 精霊の力かな。


「それでは、ダンジョン攻略に向けて」


 スクラファさんが拳を掲げる。


「何ですか?」

「やるでしょ? えい、えい、おー! って」

「やらないですよ」

「やろうよ、景気付けにさ」

「えぇ……」

「はい、一緒に!」


 二人で声を合わせて「えい! えい!」


「待ちな!」

「おぉ?」

「やっぱり来やがったな、詐欺師ども」


 夜霧の向こうからハロースさんとその仲間たちが現れた。

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