202011 ジャパロボ チーム祐奈3-6

渋谷かな

第1話 チーム祐奈 3-6

「私は要らないの? 祐奈は要らない子なの? 私を捨てないで! お父さんー!!!!!!!!!!」

 祐奈は悪夢を見る。それは父親に捨てられる夢だ。


「必要とされるのは、ジャパロボの優秀なパイロットとしての戦闘データを取るためのモルモットとしての自分か。」

 回想が始まる。これは綾幕僚長が、まだ祐奈の教官であった時の話だ。

「zzz。」

 祐奈は眠り続けている。

「まさか祐奈はんのお父さんが世界に侵略戦争を仕掛けるとは!?」

 まだ祐奈のジャパロボのAIロボットの明治天皇は生きている。

「ただの負け組のゲーセンのオッサンやったのに出世したもんや。」

 祐奈の父親の森田は、ただのゲームセンターのアーケードゲームを開発する倒産寸前の中小企業の社長だった。カーロボットゲーム「ジャパロボ」を開発しヒットし、日本政府に買収されジャパロボ大臣になった。

「権力を持つと人って変わってしまうんだろうね。」

 そして第2回ジャパロボ大会が行われている頃には、空っぽのジャパロボの量産を富士の秘密工場で行っていた。もちろん世界を我が物とするためだ。

「全国ジャパロボ大会で祐奈はんは3連覇したけど、そんな喜びは一瞬で吹っ飛んでしもたわ。」

「そりゃあ、そうだろう。森田が大量の無人量産機に搭載されたAIのデータが娘の祐奈の戦闘データだからな。まったく残酷なことをしやがる。」

 娘より世界征服を優先した父、現大日本帝国森田帝王。

「これより日本国は大日本帝国を名乗り、全世界を支配する! ワッハッハー!」

 ジャパロボによる世界征服が達成されたのであった。


「なんだ!? この私に流れ込んでくる悲しみは!?」

(キャアアアアアアー!?)

(いや!? 死にたくないよ!?)

(どうして!? 私たちは何も悪いことをしていないのに!?)

 戦争の悲しみが世界中から祐奈に注ぎ込まれる。

「それに・・・・・・憎しみ!? 私は何もしていないのに!?」

(許さないぞ! 大日本帝国!)

(森田祐奈! うちの娘を返せ!)

(うおおおおおおー!?)

 そして戦争の悲劇は新たな負の感情を生み出す。

「嫌だ!? 嫌だ!? 来るな!? 私は何もしていない!? 私は悪くない!? 悪いのはお父さんだ!? ギャアアアアアアー!?」

 精神が崩壊した祐奈は、その時から眠り続けているのだった。


「わてが祐奈はんの夢の世界に行きます。祐奈はんが怖い夢を見ないでいいように。」

「悪夢の精霊ナイトメア・システム!? 完成していたのか!?」

 夢の変換装置である。

「祐奈はんには、寝相が悪くて破壊したと言っておいてや。この子を悲しませたくないんで。」

 祐奈のジャパロボのAIロボットの明治天皇が姿を消した本当の理由であった。

 つづく。

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