12 星ノ8「旧知」(2)




「久し振りだな、ジレン。……トネロだ」


『トネ……な、なんじゃとぉおお!?』





星ノ8「旧知」(2)




『……トネロ、久しいのぉ』


「ああ、相変わらずのジジイか?」


『大きなお世話じゃバカもの!……してなんでおぬしがソルコンチと……』


「分からないか?」


『おぬしが、もしかしてカラスか』


「ああ、良かったな」


『で? 一連のこの状況……』


「ジレン様、トネロ殿が事情を説明する代わりに、ジレン様と話をさせろ……と」


『ほぅ。で?』


「コウタ様のお人柄は、俺も重々理解している。俺が引っ掛かるのは、お前だジレン」


『なんじゃトネロ。……旧知の仲じゃろぅに』


「俺はな、お前の狡猾こうかつな所が引っ掛かるんだよ……」


狡猾こうかつ? まぁよかろう。でわしにどうして欲しい』


「お前は今サンミエルの元老で相違そういないな?」


『うむ。思いやりでいえば頭様とうさまとどっこいどっこじゃ』


「ではコウタ様の次にも持っているという事で間違いないな?」


『うむ。思いやりでいえば頭さ――』

「あーー! 話が進まんっ!」


『なんじゃー。早く言えまどろっこしい』


「……お前の髭いつか抜いてやるぞ」


『このっ! もう抜かれたわいっ! 思い出させるな気分悪いっ!』


「うっ……」


ソルコンチは何も言えず、テーブルの珈琲から目が離せない。


「ふん! ざまあないな。それでだ」


『ふんっ! それでなんじゃ!』


「事情を話す代わりに、デル・タマーガ上空の物体の保証と、260年前の合同調査跡地への通行許可を約束しろ」


『な! なんじゃと!? 事情を聞く前にそんな事出来るわけなかろう!!』


「……まあ無理はないが、それが約束出来なければ知らん」


『それは仕方ないな。無理じゃ……』




「……」




『……』




「……」




『……』




「……」




『……』




「どうなっても知らんぞ」




『無理なもんは無理じゃ』




「……お前」




『なんじゃ』




とはどうな――」

『よし、約束しよう。話せ』


「決まりだな、ふっ」


「ジ、ジレン様大丈夫ですか?」


『なんじゃ、口出し無用じゃインパツェンド総隊長』


「は、はっ!」


「いい身分だな、ジレン」


『うむ。では話せ』


「…… 先ず、デル・タマーガ上空のアレは、危険な物ではない。安心しろ」


『うむ。なぜそれをおぬしが言いきれる、その根拠はどこにある』


「…… おい、ジレン。ソルコンチ総隊長以外ここから出て行って貰うよう頼めるか」


『……分かった。ソルコンチ、そこには誰がおる?』


「はい、ニックキン司令長官と隊員三名、それと酒場のマスターです」


『おお、ニックキンがおるかぁ』


「ご無沙汰致しております! ジレン様!」


『おお! 相変わらず筋肉臭い声をしておるのぉ。おぬしもおったかぁ』


「は! 総隊長が第3詰所にいらしたと聞きまして」


『そうかぁ…… うむ。では酒場のマスターとは何じゃ?』


ソルコンチは、酒場であった不祥事や、トネロと酒場の店主との関係をジレンに説明し、店主も同席した方が良いとジレンに懇願こんがんしたのだった。


『そうかぁ。…… それは申し訳ない事をしました。私からも通信先からではございますが、謝罪いたしますぞ』


「あ、い……いえ! サンミエルの元老ともあろう御方が私になど……」


『いえいえ、当然の事ですから。さて、では店主殿を残してニックキンも他の隊員も、ちと席を外してくれんか』


「は! 聞いての通りだ、皆外へ出るぞ」


『はっ!』


隊員達が返事をすると、ニックキンが隊員達を連れて、詰所の外へと出て行ったのだった。



『これで良いかの?』


「ああ、では続きだ。あれはアス大陸ニューバーグにある、アポロの技術開発局に頼んで造ってもらったものだ」


『――!! なんと!』

「――!! アポロに!?」


「端的に話すぞ、あの物体には磁場発生機能は無い。有るのは"アカルマ" 」


『アカルマ?』


「ああ、簡単に言うと、睡眠を誘う自然音波に宇宙音波であるエーク波。それに太陽から超微量に発生しているスーリア波、それらの波形を少し編集したものを、あの物体から出している」


『ふーむ…… しかしボサ2ツーの万象検知を使った時は、音波の類は結果に出とらんかったが』


「出る筈がない。アポロの技術開発局が造ったんだぞ? 」


『しかし…… いや続けよう。それで何故その検知できない音波を?』


「ずばり核心を言う」


『……うむ』





「ヒマワリの地下エネルギーの流れを止める為だ」




『――ッ!! な、なんじゃと!?』


「――ッ!! な、なぜそんな事を!?」


―――― 。






―――― ネリスマリ大洋 アス大陸西側沖合い47キロ地点 上空250メートル




北の町ノーランの第3詰所と時を同じくして、コウタ、たつき、ケインがブロックウォールを使い、傍受ぼうじゅ不可能な空間を確保したのち話を始めたのだった。



「お前らが来る事は、あらかじめ予想できた」


「それはどうでもいい。俺が言いたいのは、同盟会議に提出した日時でやれということだ」


「戦闘馬鹿、何か隠してるだろう。吐け」


「おいたつき、とりあえずその戦闘馬鹿はやめろ。ムカつくから」


「……よかろう」


「ふん、隠すも何も、次の同盟会議で話そうと考えてたさ」


「なんだ、時空転移実験と関係あるのか」


「おそらくそうだろう。でなければ前倒しに、越境えっきょうの全面禁止などせん」


「…… まあお前らが来て、こうなるだろうとは思ってたさ。その時どうするかは出たとこ勝負で考えてたが…… どうも話をしないと納得しなさそうだしな」


「あたり前だろ、早く話せこっちはデル・タマーガの事もあるんだ」


「俺もここへ来る時に確認したが、壊すべきだったか。なんだアレは」


「鉄、あれは心配するな。特に危ないもんでもない。たつきお前は性格直せ、俺より危ねー奴じゃねーか」


「なんだケイン、お前何か知ってるな」


「お前より危ない奴だと? ……そんな訳ないだろう、妹をこよなく愛する良い兄だ」


「ああ、あれはただヒマワリの地下エネルギーを止めるだけだ。黙れたつき、ややこしい」


「……おい、理解できなかったからもう1回言え」


。黙れだと? この白髪頭が」


「お前なっ!本っ当に…… だからつばさが寄り付かねえんだよ!」


「ケイン! つばさの事は言うな、たつきが面倒臭くなる。それよりもう1回言え」


「チッ、鉄、お前も頭弱くなったなあ。何回も言わねえと理解できねえのか」


「いいからもう1回言え、お前ほどじゃないころすぞ」


「だからつばさが? ……」


「だからぁ、ヒマワリの地下エネルギーを止めるんだよ」


「……イルスーマに影響が出たらどうするんだころすぞ」


「俺が妹を妹として愛すのが……」


「大丈夫だ心配するな。ごく一部分の流れを止めるだけだ」




「一部分? デル・タマーガ ……あんな物で止められるもんなのか……。何の為に」




「つばさは、兄が、兄として愛されるのがいやなのか……」




「鉄、お前たぶん今、カラスを追ってるだろ」




「…… ケインお前、通信傍受は同盟憲章違反だぞ」




「ケイン……それはつばさ本人から聞いた事なのか?」




「いや傍受なんかしてない、というかちょっと待て。おいたつき! ややこしいからいい加減黙れ!」




「だから言ったじゃねーか、つばさの名前をだすなってころすぞ」




「……」




「悪かったよ! てかお前もころすぞころすぞイラッとするからやめろ!」




「で、カラスがなんなんだ」




「……トネロだ」




「そう、トネロって奴だ。ジレンがよく知ってんだろ」




「――!! トネロ …… 昔ジレンとよくつるんでた奴か」




「ふん、それでセバス港のカラスらしき女は誰だ」




「……よく知ってたなぁたつきぃ、最近お前の所からこっちへ入ってくる奴多過ぎだぞ」




「たつきもそこまでつかんでたのか。女? セバス港の奴は女なのか?」




「俺の部隊は潜伏が専門だ」




「…… デル・タマーガの合同調査跡地には、その女の『 姉 』がいる」






星ノ8「旧知」(2) 完



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