26話:クエストをクリアするとどうなるか知ってるか……? 時が過ぎてんだよ
発売初日にスタートダッシュだと買ったゲームで、約一週間かけてクリアしたクエスト。
難易度も俺だから苦戦したというわけではなく、普通に考えて難しいクエスト。
仕事をしながらだと、どうしてもやり込むことはできなかったが、それでも結構な労力を注いでクリアしたクエスト。
それが俺にとっては微妙に使えないものだと知ったときの心境はどうだろうか。
「……マジでいらんな」
「そう言わないほうが良いんじゃない?」
「いやだって……」
現在、アカリと二人でアインスの街を散策している。
アカリは俺の戦闘を見届けるのが目的だったらしく、この後の予定は特に考えていないという。
そのため、このゲームにおける重要な街のアインスの街というものを紹介しながら歩こうとしていた。
だが、今は基本的には俺の愚痴を聞いてもらっている。
「いや、分かるのよ。
強いのは」
デュアルマジックLv1
効果:重複詠唱を行うことができる。
またも説明不足なスキルだ。
だが、レベル表記が存在しているということは、おそらくは継承ができるスキル、ということだろう。
つまりは、あのジジイがもとから持っていたスキルであり、それを俺が継承した、ということだ。
「多分使ってたよね」
「あぁ。
あの戦いで、基本的にジジイはファイアボールしか使ってなかった。
ログには魔法名が表示されないから確定ではないけど、多分そう」
俺の知らない魔法だったらお手上げだが、まず間違いなくファイアーボールを使っていただろう。
「つまりはダンの話していたありえないくらいの詠唱の短さ、ってのはそれのおかげだよね」
「……それは理解しているんだけどなぁ」
自動詠唱の魔法では、必要な詠唱時間があるだけで、詠唱が終わったら即座に魔法を使わなければならない、というのはない。
だから基本的に魔術を使うプレイヤーは、事前に詠唱をしておいて、常に詠唱中にすることで、ノータイムで魔術を使うことができる。
まぁ簡単に言うと、連発はできないがストックはできるのだ。
それも基本的に一個しかできない、という認識だったが、このスキルを使えば恐らくそれが増える。
「俺これから魔術使いになる?」
「……流石にそこまでステータス上げたらねぇ」
「俺もそう思う」
俺の現在使用している魔術は、『ヌルボール』のみ。
しかも環境魔術なのでダメージは皆無。
目隠しに使えて魔法相手に少し当たり判定を減らすためのものが一つ増える。
「他の人に比べるとマジで恩恵がなさすぎる」
「あはは……僕がもらって魔法職に慣れば良いんだけど、そうも行かないよねぇ」
「まぁ、俺がスキルレベルマックスにしたら継承したるよ」
レベルがあるということは継承はできる。
せめてもの活用として最初から始めているアカリには、これの存在を考えて成長してもらっても大丈夫だろう。
「うーん。
でも正直、それスキルレベルの上限わからないし、やりたいことは銃ブッパすることだから別にいいや」
「さいですか……」
もらい先がなくなった。
「……新しい魔術を覚えるか?」
「それが良いんじゃない?」
「でも……装備が……」
現在、俺とアカリの装備は大差ない。
俺は初期武器と初期防具を着ている。
アカリも同様だ。
基本的に俺の金は防具には回らない。
それより欲しい物や使えるものがあるからだ。
「それに関しては……まぁ、今度のいべんとで 稼げば良いんじゃない?」
「……イベント?」
「え? 見てないの?」
「え?」
アカリの言葉に純粋に疑問を抱いた。
イベント。
それはMMOであれば定期的にやってくるお祭りの様なものだ。
参加すれば何らかの旨味があるのが特徴だが、
「早くない?」
「そうかな?」
「え、だって発売……」
一週間経ってるやん。
え、一週間既に経ってるやん。
「ま、まぁそれで今回のイベントの内容は?」
「PVP」
「へ?」
「PVP。
プレイヤーVSプレイヤー」
アカリは俺との会話の最中に、ブラウザをウィンドウに表示させ、イベントのページを俺に見せる。
そこには、大樹を背景とした壮大な風景の前にデカデカと剣と剣のロゴのついた文字があった。
『ブラッドプリズナー』
え、物騒では?
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます